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67. 最終回
― 3年後 -
「 ただいま~ !」
「ママ~、 おかえりなさい~ !」
「はい、ただいま、崇」
「あ、みなさまもおかえりなさい!!」
ニコリと可愛い笑顔で迎えてくれた甲斐家長男。
滋さん譲りで人見知りもせず社交的な子だ。
「「「 ただいま。 」」」
両手いっぱい買い物袋を抱えた滋さんに子犬のようにまとわりつく崇くんと戦利品の報告をしている滋さん、前を歩く仲良し親子にちょっと圧倒される。
「先輩、私、荷物を部屋に置いてきます。」
桜子がそういうと、優紀と滋さんも買い物袋をカタカタ鳴らしてついていった。
ここは、イタリアにある私とあきらと一歳になる息子の居城。
バタン
「ただいま!」
「おう、おかえり。」
リビングの大きなソファーにすわり、お腹の上で愛息誠一を遊ばせている旦那様。
横には、片手を上げて迎えてくれる道明寺、西門さん、花沢類が微笑んでいる。
何故に居る?御三人方・・・。まあ、びっくりもしないけど。
私たちは、イタリアで感動の結婚式をあげてから、日本でも披露宴をあげた。
新婚旅行はイタリア国内をのんびりドライヴだったから、トンボ帰りしてそれ以来、日本に一時帰国すらしていない。
イタリアは、本当に見るところがいっぱいあって、愛車マセラティで南部シチリア島まで行った。
途中、ローマで2泊。シチリア島でのんびりして3泊だったか?
そして、「ナポリを見て死ね」と言うじゃない?とナポリにも寄ってもらって3泊くらいした。
カプリ島の青の洞窟は、言葉に出来ない美しさで、実物を見ておいてよかった。
それから、フィレンツェ・ベニスとイタリアの主な観光地をめぐって戻ってきた。
私にとって、ミラノ郊外にあるこの屋敷で過ごす毎日も、誠一が生まれるまでずっと新婚旅行気分だった。
休みになると二人で美術館へ行ったり、ジェラートをつつきあったり、周りを気にせず家の外でもベッドの上でもまったりと・・・。
わざわざ遠くへ出かけなくても、二人で手をつないで公園を散歩するだけでも嬉しかった。
ここは異国だし、ナント言っても結婚している二人だし、変装などせず羽を伸ばせる。
遠距離恋愛で寂しかった分、ふたりで幸せボケするんじゃないかと思うくらい、思い切り甘甘な時を堪能した。
そういえば、ようやく「最後の晩餐」も見ることが出来たんだ。
そんな私達の噂を耳にしたT3とF3達が、幸せを分けてとばかりに毎年、夏になるとやってくるようになったのだ。
道明寺は、すぐに婚約者と結婚式をあげ、ただいま奥様は出産のため里帰り中とのことらしい。
道明寺の結婚式で初めてみた奥様は、聡明な印象で正直安心した。
ミラノ近郊にコモ湖という別荘地で有名なところがあって、
一目見て気に入った道明寺がコンドミニアムを購入したのは、生まれてくる子供と家族一緒に過ごす未来を描いてのことだと思う。
明日は、みんなでコモ湖へ遊びに行くことになっている。
花沢類は、美作商事と業務提携している会社があるとかで、時々ここに来て泊まっていくから、花沢類用のパジャマと洗面道具は常に整えてある。
花沢類と二人でいると、時折、非常階段を思い出す。
多くの言葉を交わさなくても存在が優しくて、不思議と癒される。
高校生の頃はよくわからなかったけど、あきらとこうして男女の愛情を深めた今、花沢類の中には特別、何かが私とピタリと合う感覚をより鮮やかに感じる。
元来、ナイーヴな彼には私以外の人の物も、見えているのかな?
心の琴線に触れる微妙な線が・・・。
精神世界のテリトリーを絶対に犯さない私たちは、相性のいいソウルメイト。
時を経ても、心を閉ざさない限り、変らない関係だろうと思う。
最近、花沢類のお陰で楽しみが出来た。
私が花沢類と一緒に、会社から帰宅したあきらを迎える日は、ちょっと拗ねた顔する可愛い旦那様が見れること。
「俺は、まきのとあきらのキューピットなんだから、優しくしてよね。」
天使の笑顔付きでいわれると、あきらは無下に怒れないみたい。
そんなあきらを見ると、ぎゅっと抱きしめて安心させてあげたくなること気付いてるかな?
そして、西門さんはというと、どうも優紀とあやしい。
優紀は、西門さんにお茶を習っているだけと言っているけども。
あきらに聞くと、「まあ、放っておけばいいんじゃねえか。」と一言だけでつまらないし、今晩あたり、桜子とつついてみようかな?
バタン
「「「 ただいま~。 」」」
「ふう~、疲れた~!崇にいっぱいサッカーグッズ買ったよ~。
A.C.MilanとInterのユニホームをシンガードまでセットで・・・。
やっぱり、イタリアは買いたいものがい~っぱいあって、いいわ~。」
「そうですよね、桜子も、Armaniで買った皮のコートが気に入ってご機嫌です!Pradaも本店ならではの商品がそろってるし、選ぶのがほんと楽しいですよね・・・。
先輩はいいですよね、いつでもお買い物できるし・・・。」
「別に、私は、そんなの興味ないから・・・。」
「あれ~?Etroで色々買ってませんでした?
Intimissimiでも・・・。」
「あ~、ストップ! そ・そうだね、つられて買ったかな・・・」
もう~、桜子ぉ~、Intimissimiは人気のランジェリーショップ。
やっと授乳期が終って、可愛いブラが欲しくて選んでいたんだ。
私達の買い物談義を耳にするのは、毎度のこととF4は口を挟まない。
イタリア製の大きなソファーがまったくの背景となるくらい、華のある男達。
あいかわらず4人とも、ばらばらなのにまとまっているという印象なのは、やっぱりみんなが揃ってきれいからだね?
そろいもそろって、あのF4がここに座っているなんて、英徳時代を考えるとなんて豪華なお部屋なんだろう。
「つくし、さっき、亜門からFAX届いてたぞ。」
誠一を太ももの上で立たせ万歳させながら、教えてくれる子煩悩なパパ、あきら。
我が家でよく見かける光景だ。
「へぇ~、こうやってrevolution’sの曲が生まれてるんだ。」
「うん、私、また曲作り始めたの。甲斐さんから聞いて知ってた?」
「つくしの曲を編曲していた時に、部屋に入ったから、教えてくれたよ。よかったね、つくし。Revolution’sが売れる曲、お願いします! 」
頭に浮かんだメロディーラインを楽譜に落としていたのが溜まってきて、亜門に話して以来、いい曲が出来たらFax送信している。
編曲など加えられた楽譜が送り返され、煮詰めることが多い。
オーディションで新ボーカリストになった男の子は声域が広いから、曲が作りやすくて遊べるのでおもしろい。
こんなかたちで音楽を続けられるとは思っていなくて、本当にラッキーだ。
「そういえば、新しいヴォーカルの子も結構イケメンですよね。 年はいくつなんですか?」
「え~っと、たしか・・・20歳前半・・・か?」
「おい、桜子、お前もいい加減落ち着いて、いい男探せ!
お前、今年25か?」
「じゃあ、道明寺さん、いい人紹介してくださいよ!そもそも、道明寺さんのせいで理想像が高くなってるんですから、責任とってください!」
「お?俺に責任転嫁するのか? 完璧な男は俺らくらいしかいないんだから、いい加減あきらめろ!」
「そうそう、俺らと一緒に居たことは、運が悪かったと思って、ちゃんと前を向いて歩け!クリスマスケーキは新鮮なうちがおいしいよ~。」
「西門さん、それはセクハラですよ!!セ・ク・ハ・ラ!!!」
「ちょ、ちょっと、いやぁ~、スマン、桜子。」
そっぽ向く桜子に拝みながら謝っている西門さん。
「冗談です!」
「なんだよ・・・、マジ、あせったわ・・・。」
「Armaniのスカート。」
「 ・・・・・? もしかして、俺におねだりしてる?」
「ねだっているんじゃありません。それで、セクハラは忘れてあげます。」
「お前なあ、詐欺じゃねえの? どうせ、付き合ってきた奴にもそんなことしてたんだろうが・・・」
「失礼な・・・セクハラするような人いませんでした!」
「「「「 はっははは・・・」」」」
「総二郎、お前が折れるのが一番だぞ!!」
私は、あきらのソファの肘置きに腰掛けて、彼の肩に手を乗せ微笑んだ。
今でも、こうしてまとめ役になるのはたいてい彼。
道明寺がル・ムーリスで話してくれたように、物心ついた頃から、ずっとまとめ役だったらしく、さすがのF3もあきらには言い返さない。
ただ、違うのは彼の側で私が微笑んでいる。
ずっと彼の側に寄り添いながら・・・、教会で誓ったとおり・・・。
汝は、その健やかなる時も、病める時も、悲しみの時も、富める時も、
貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、
死が二人を分かつ時まで、堅く節操を守ることを約束しますか?
私が選んだ人は、あきらだった。
あきらが選んだ人は、私だった。
選ぶことは、時として、素知らぬふりして人を試すから、大事な選択に気付かないかもしれないし、間違えてしまうかもしれない。
正解なんて誰も教えてくれない人生なのだから、自分のためにパーフェクトな答えを見つければいい。
あの時こうしておけばよかったって、後悔しないように、顔を上げて歩いていこう。
また、新しい道が始まったばかりだ。
次の分岐点で、ちゃんと私の答えが出せる私で居るために。
来夏も、愛する家族と仲間の笑顔に囲まれて、はじける笑顔であるために・・・。
End ('07.Oct.16)
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