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38.
目が覚めると、すっかり朝になっていて、横に美作さんの姿はなかった。
昨夜というか、今朝、私たちはとうとう結ばれた。
想像以上に痛かった。
まるで、火柱を突き刺されたような痛みだった。
でも、美作さんだから怖くなかったし、痛みも耐えれたのだと思う。
今日から自分も女なのだと思うと、なんだか晴れがましいような気もしないではない。
その後ってどんな感じなのだろうかとやたら想像してたけど、実際は自分の体が愛しくて抱きしめたくなるものなんだね。
昨夜のことが思い出され、一人赤面する。
美作さんはずっと私を気遣いながら、壊れ物のようにそっと優しく取り扱ってくれていた。
初めての人が美作さんでよかった。
感動で心の中には温かいものが満たされている。
美作さんにリードしてもらい全てを預けたから、細かいことは思い出せないけど、正直言って無事に初体験を乗り切れて一安心だ。
シャワーを浴びるため、ベッドからヨロヨロと立ち上がりソファーセットまで行った。
テーブルに残されたメモには、きれいな字でこう書いてあった。
“昼前には戻る。ゆっくりしておけよ! あきら”
時計を見ると、もう10時過ぎ。
けだるい体をバスルームまでひきづり、熱いシャワーを浴びる。
鏡の前に立ち、「ぎょぎょっ。何これ・・・・?」
首から胸にかけて、赤い小さな痣みたいなのがちらばっている。
「ど・どうしよう・・・・。私の服って、例のカクテルドレスしかないよね・・・。」
仕方なくもう一度、バスローブに袖を通し、お化粧して待つことにした。
ベッドには、昨夜の名残のよれたブランケットとゆがんだ枕。
そして、白いシーツには、赤褐色に変わった血痕の跡。
やばい!
そうか、うわさには聞いていたけど、これがお印なのね・・・・と感慨深く思いながらも、急いでシーツを剥ぎ取りバスルームに駆け込んだ。
洗濯石鹸のかわりにフェイスソープで汚れを揉み洗いし、丸めて隅っこに置いた。
ふぅーっと一息つき冷蔵庫から冷たいスパークリングウォーターを出したところで、ピンポーンとチャイムの音。
ドアを開けると、パリッとスーツを着て微笑む美作さんだった。
「おはよ、牧野。起きてた?」
「お・おはよう・・・・。もうとっくに、起きてるよ。朝からバタバタだったよ・・・」
「ん?・・・?・・・」
「いや、その、色々あって・・・。」
部屋を見回し、ベッドのシーツが無いのを見つけた美作さんが笑いながら、
「ああ・・・もしかしてシーツ?自分で洗ったの?ふっ、牧野らしいな。」
美作さんはいつものように肩をポンっとたたいてくれた。
美作さんは、昨夜のことが何も無かったかのように何も変わらない。
いつものようにCMに出てきそうな完璧なスーツ姿で、やさしい笑顔もいつもと同じ。
私だけが、特別な朝を迎えてるの?今朝のことが幻だったなんて、思えないんだけど・・・。
じっと、美作さんを見つめていると、気付いたのか目を細めながら近づいてきた。
少しかがんで、私の目を覗き込みながら言う。
「牧野・・・、ごめんな。目覚めたときに側にいてやれなくて。
ちょっと、会社に用があって顔出してきた。この後オフにしてきたから、一緒に過ごそうな。」
子供をあやすように、そう言って私の頭をなでてくれた。
「いいの?仕事。」
「ああ・・・。それより牧野、ベッドで言ってくれた言葉もう一回聞きたいんだけど。」
「え?何だったっけ?」
「涙を浮かべて言ってくれたろ?俺、感動した。」
額にチュッってキスをしてくれた。
「あぁ、あ・あれね、ちょっと今は・・・。」
美作さんの前で、あらわな格好をしたことがまざまざ思い出されて、顔が真っ赤になっていたと思う。
「俺は最高に幸せだ。ずっと一緒にいてくれるよな?」
そして、強く抱きしめられた。
『よかった、幻じゃなかった・・・』
だから、勇気を出して耳元で小さくささやいた。
「私でよかったら・・・ずっと側にいさせてください。・・・愛してるよ///。」
美作さんの腕の中にすっぽり包まれて、女に生まれて本当に良かったと生まれて初めて思った。
「うーん、そんなことされたら、ベッドに連れて行きたくなるな・・・。
でも、止めておく。牧野が壊れたら困るし・・・。
お腹すいただろ?飯くいに行こうぜ!洋服、適当に買ってきたから、着替えて。」
大きな紙袋を渡された。
Theoryのシンプルなキャメル色のワンピースだった。
私が抵抗無い色目をえらんでくれたんだね。
「ありがとう!美作さん!」
飛びついて頬にキスをする。
「お前・・・案外、元気だな・・・。」
「元気が取り柄だもん・・・。」
つづく
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