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36.
宴は乾杯から始まって、空のワインボトルが増えるにつれて、話題は私たちカップルのネタに移ってきた。
口火を切ったのは桜子で、酔った勢いか大胆にも、美作さんは流行のセックスレス症候群では?とか、付き合う前から同居しちゃったのが運のつき!など返事に困るようなことばかり飛ばす。
「そうか・・・牧野、まだ鉄パンはいているわけか・・・。まったく、天然記念物並みだな。
マダムキラーと呼ばれたあきらも、結局、司と同じレベルだったということか。」
西門さんは、美作さんをニヤニヤ見ながら言う。
「同じレベルの訳ないだろ。総二郎!俺らは、一日一日きちんと愛を育んでいるんだ。お前らに心配されることは一つも無いぞ。」
「美作さん、桜子だったら、いつまでも何もされないなんて、女のプライドがガタガタにくずれますよ。
それとも、先輩のことを、聖女か尼僧と勘違いしてるんではないですか?」
「・・・。」
無言の美作さん。
「そうだ!つくし、アッキーの寝込みを襲っちゃえ!名付けて、“油断大敵大作戦!”」
「滋、お前、何考えてんの?」
「何言ってるんですか???滋さん!もう!」
美作さんと私が同時に発する。
「まきのは、何もしなくていいよ。」
周りの盛り上がりとは無関係にマイペースな類がいる。
「おい、類!近い!」
「いいじゃん、減るもんでもなし。」
「だめだ、少し離れろよ。」
「まきのの匂い、大好きだもん・・・。」
「//////// 花沢類、恥ずかしいじゃない・・・。そんなの・・・。」
「今日のまきのの口紅の色、いいね。似合ってる・・・。」
花沢類に唇を凝視されて、なんだか恥ずかしい。
すると、私と花沢類の間に、美作さんが割り込んできた。
「類、お前、時差ぼけだろ?あっちで寝て来い!」
「やだ。ここで寝る。」
「まったく・・・・、お前は・・・」
美作さんは、文句をいいながらも、なんとなく口元が笑っている。
「あきら、司に公認されて、彼氏の余裕? ボーッとしてるとマジで危ねえぜ。
「敵は類だけじゃなさそうだぜ。ドレスアップした牧野はいい女の部類に入ってたぞ。
プレイボーイがワンサカいる芸能界には、常識が通じない奴もいるらしいしな。」
西門さんが、諭すように話す。
「ああ、そうかもな。」
ワインを飲み干し、床を見つめる美作さん。
さらに、空のワインボトルが何本も並ぶ。
花沢類はすっかり私の横で寝入ってしまい、私もいつの間にか眠ってしまった。
「あきら、そろそろ帰るわ。おい、滋、帰るぞ。桜子をたたき起こせ!おい、類!かえるぞ、起きろ!!」
「帰るのか?」
「おう、明日は茶席が入ってるんだ、悪い。あと、牧野をたのんだぞ!」
総二郎は、ウインクして、鉛のように寝入っている類を抱えながら、がんばれよ!と一言残し、滋と桜子を連れて帰っていった。
「ふうっ・・・。皆、帰ったか・・・。」
急に静かになった部屋には、ソファーで眠っている牧野の寝息だけが聞こえてくる。
俺は、桜子が言うように、牧野に対してわざと距離を置いてる。
牧野の初めては怖がらせることなく、自然に運んでやりたくて、それだけに動くことが出来ないでいる。
牧野はどんどん綺麗になってるよな。
俺が居るからと思っていいよな?
大事な牧野を傷つけるのが怖い。
俺の悪い癖だ、こんな時、思い切って動けないのが歯がゆい。
ベッドに運ぼうと牧野の体を抱える。
なめらかな素肌の感触と艶やかな唇が俺を容赦なく誘惑する。
ベッドインのタイミングを考えてるというのに、俺の中心が熱くならない方がおかしい。
やばい、眠っている牧野を無理やりどうにかしてしまいそうだ。
俺は、牧野を注意深くベッドに横たえると、受話器を取り内線9番を押した。
時間外のところ、開けてもらった人気のないプール。
邪念を振り払うように何度も往復し、高まりを治め、やっと安堵感を得る俺。
窓の外に目をやると、三日月が浮かんでいる。
三日月に照らされた高校生の牧野が思い出され、手の届かなかった牧野が、今俺の彼女でいる。
その事実だけで、俺は心が満ちてくるのを感じた。
う~ん、このベッドいい気持ち・・・・。あれ?そうか、ここはメープルだ・・・。
隣を見ると、なんと、美作さんが眠っている。
え~っ!!記憶が無いうちに私の初めてが・・・?
あせりつつ、毛布を急いでめくると昨夜のままドレスを着ていてホッとした。
眠っている美作さんをそばで眺めてみる。
男らしい鼻筋、眉毛の一本一本が計算しつくされたようにキレイに並んでいる。
そして、形の良い唇。
規則正しく胸が上下するのを見ていると、静かな安らぎを覚える。
どんな夢を見ているの?私も連れて行ってほしいよ、なんて。
もっと側に寄って、肌に触れて体温を感じてみたい。
けれども、起こしちゃうからあきらめて、そっとベッドを抜け出し、バスルームにむかった。
まだ、夜が明けきらないこんな早朝にお風呂にゆっくりはいるのは、贅沢な感じがする。
昨夜の桜子の言葉を思い出す。
本当のところ、美作さんは私のことどう思っているのだろう・・・。
やっぱり、私に色気が足りないのかな?
まだ勉強が足りないのかな。
バスルームから出ると、美作さんは目を開けていた。
「あ、ごめん。起こしちゃったんだ・・・。」
「いいよ、別に。水、飲む?」
「うん。」
美作さんがくれた冷たいお水は乾いたのどを潤して、私にちょっぴり勇気をくれた。
「ねえ、美作さん、私じゃダメなのかな?」
「牧野・・・ダメって・・?」
「桜子じゃないけど、いつまでも触れられないと、私でも不安になるよ。」
思い切って吐き出してから俯いた。
美作さんが近づいてそっと私を抱きしめてくれる。
「ごめん。ダメなわけないだろ。」
掠れるほど、小さな声で囁かれる。
きつく抱きしめられて、私も手を回した。
「俺が不安にさせてたんだな。ごめんな・・・。」
美作さんの抱きしめる手にさらに力がこもった。
「俺、牧野を傷つけるのが怖くて、慎重になりすぎてたかもしれない。側にいてくれるだけでも、マジで嬉しいから。」
美作さんが私の瞳を見つめる。
その焦茶の瞳には力がこもり、私だけが写っている。
大きな両手で私の背中を支え、軽いキスが落とされる。
そして、頬・額・鼻、唇に・・・。
はじめは、途切れ途切れの短いキスがだんだん深く長いものに変わっていく。
美作さんの舌を受け入れる時、唇と同時に私の心と体もゆっくり開くのを感じる。
舌が執拗にからみついて、歯の裏まで口内全てを犯される。
唇を強く吸われて体の力がぬけていき、立っていられるのは美作さんが背中で支えてくれてる力だけ。
「牧野・・・・。」
美作さんの瞳も声も、怖いほど色っぽい。
この先どうなるか考えると、やっぱりちょっと怖くなった。
「牧野、俺はこの先の牧野を知りたい。けど、まだイヤなら何もしない。教えてくれないか?」
苦しそうな表情の美作さん。
「イヤじゃない!嬉しいよ。でも、正直、ちょっと怖い。」
愛しそうに私の髪をなでながら、「大丈夫だから・・・。」とささやく。
美作さんに言われると、本当に大丈夫な気になるから不思議。
このまま未知の世界に連れて行ってもらいたいと思った。
そして、お姫様抱っこされ、ベッドに運ばれた。
つづく
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