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35.
結局、私のパートナーは花沢類と美作さんの二人になった。
美咲ママがはりきって用意してくれたのは、背中が大きくあいた薄いモカ色のカクテルドレスだった。
「うん。素敵よ、つくしちゃん。さて、あきらちゃん、どうでるかしら?楽しみだわ・・・うふふっ」
鏡に映る自分は、確かに違う自分みたいで大人に見える。
Revolution’sに関わるようになって、素敵な大人との出会いが多く、勉強の日々。
メイクアップ・アーティストさん、スタイリストさん達からどうすればきれいにみえるか客観的に言葉で教えられた。
そして、人前での話し方や振る舞い方も観察するようになった。
恋愛だって、立派な大人なのだし、ウブな私から卒業してちゃんと表現したい。
美作さんに釣り合う様な大人になりたい。
恋をすると、あんなに奥手だった雌(メス)の本能でも一人前に疼き始めるものなのだ。
じゃあ、これは美作さんのお陰でもあるのか・・・。
いつのまにか、細胞全てを焚きつけられて、皮を剥ぐように身も心も大人へと近づいていく私。
美作さんとのスキンシップにも慣れてきたし、あともう少し距離を縮めてもいいと思ってる。
ふわりと抱きしめられる心地よさを思い出す度、身体がフワリと浮き上がりそうになる。
そんな事を考えながら、美作さんと花沢類の待つリビングに入っていった。
「おまたせ。」
二人とも私を見つめたまま、ノーリアクションだ。
二人とも同じ表情でおかしい。
「クスッ。二人とも、へん。」
「まきの、キレイだよ。」
花沢類が微笑んでいる。
「お前は、見るな。減るだろう!」
美作さんがあわててけん制し、私に近づいてきた。
「牧野、よく見せて。」
私はクルリと一周まわってみる。
急に美作さんの顔がすこし赤くなったと思ったら、スクッと私の腕をつかみ、先程の部屋へ引っ張って行かれた。
「おふくろ!!!これじゃ、背中が丸見えじゃないか!!!」
美咲ママに食ってかかりそうな勢いだ。
「あ、あきらちゃん、つくしちゃんに惚れ直したでしょ?とっても白くてキレイな肌してるから、本当にきれいよね~。」
「キレイなのは百も承知だ。////・・・・これじゃ、見せすぎだ!」
「なんで?普通じゃない。あきらちゃんも、こういうデザイン好きでしょ?」
「牧野は、まだ、その~まだ、あれだ、わ・わかいんだから、露出しすぎはダメだ!」
「あら、そう?あきらちゃん、のんびりしてるのね・・・うふっ。」
美咲ママが意味深な微笑を浮かべる。
「じゃ、ストールでもかければ?」
花沢類がドアにもたれながら、会話に入ってきた。
「そうね、ストールも素敵ね。丁度いいのがあるわ。ちょっと、待っていてね。」
「あきらたち、まだだったんだ。まだ、俺にもチャンスあるってことかな。」
「うるさい、類!」
「司だったらわかるけど、あきらがねぇ。」
「だまれ、類!」
「クククククッ、それに、あきらって結構独占欲あるんだね。知らなかった・・・。」
美作さんがにらむと、花沢類は両手をあげて降参のポーズをとった。
そして、私たち三人は私を挟んで仲良くパーティー会場のメープルへと向かった。
会場はマスコミへの厳しい入場規制が敷かれ、パートナーの件はあまり心配すること無かったように思う。
でも、やっぱり美作さんは挨拶に忙しくて、常に誰かが横にひっついてる。
「あきらは忙しそうだね。」
「うん。今日は仕方ないよ。」
「まきの、あきらと幸せ?」
「色々と花沢類のお陰かな。ありがとう。」
「まきのがこんなにきれいになったの、あきらのお陰っておもしろくない。」
口をとがらせて言う花沢類。
こんな文句のセリフでも、花沢類が言うと空気を柔らかくなって、私の心を和ませてくれる。
しばらくすると、西門さん・桜子・滋さんがにぎやかにやってきた。
一際、目立つ集団だ。
「みんな、来てたんだ~。ひさしぶり~。」
「よっ、類、まきの、久しぶりだな。元気そうだな。」
「皆、お仕事でつながりあるわけ?」
素朴な疑問を聞いてみる。
「俺は、ミュージアムの日本伝統文化セクションのアドバイザーだからな。」
ビシッとスーツを着こなした西門さん。
「滋ちゃんとこも、関連会社だからこういう時は呼ばれるの。つくしが来るって聞いたから、桜子も引っ張ってきたよ。」と滋さん。
「それにしても牧野、お前化けたよな。はじめ、類の横に誰がいるのかわからなかったぞ。」
「うん、いい女に見えますよ、先輩。」
「そうでしょ?へへ。」
ようやく美作さんがやってきた。
「おっ、皆そろってるか。牧野、悪い、相手してやれなくて。
上に部屋とってあるから、後から皆で飲もうぜ!」
そう言って西門さんに鍵を渡し、また、群集の中へ消えてしまった。
美作さんが用意してくれた部屋は、エグゼクティブスウィートで食べ物や飲み物がすでにセッティングされていた。
私と桜子は、パウダールームで一息ついてお化粧直しをする。
「先輩、内面から出てくる幸せオーラみたいなのが見えますよ。いいなぁ~。」
桜子がまじまじと見つめながら言う。
「やだ、桜子、大げさな。ただ、仕事も恋愛も頑張ってるだけだよ。」
「なんだか先輩らしい。端から見たら、先輩って仕事も恋愛もすでに勝ち組じゃないですか。
なのに、それに気付かず、ひたすら進むって感じのところ。」
「どうせ貧乏性ですからね。」
「私にも挑戦したくなるような人、また現れてくれるかな。」
ポツリとつぶやく桜子。
桜子にとって、道明寺は長年にわたる想い人だった。
私よりもずっと長い間、心に住んでいたはずだから、その分開いた穴も大きかったに違いない。
「桜子・・・。ハルとはどうなったの?言いたくなければ答えなくていいけど。」
「あっ、彼は違ってました。いい男とずっと一緒に居たい男とは違うんですよね。
だてに、恋愛経験積んできたわけじゃないですから、体を重ねれば先のこともなんとなく予想がつくんです。」
「そういうもんかねぇ。」
ちょっと、たじろいでしまう、コノ手の話は。
「先輩、桜子には教えてくれますよね?初めては美作さんだったんですよね?」
「ぎょ!えっ?何、その質問。/////////・・・そんなのまだまだ!そういうことは、そのうちさ・・・。」
桜子が世にも不思議な物体を見ているかのように、目を大きく開けている。
「うそ~!!!。先輩はともかく、美作さん、どうしちゃったんですか?それは、大事件ですよ、先輩!美作さん、病気なのかな?」
首をかしげながら、先に出て行く桜子。
桜子にそこまで言われるほど、異常なんだろうか?
私だって、かたくなに拒んでいるわけではないんだけど・・・。
つづく
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