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40.
合宿所の食堂で、亜門と久々にゆっくり色んなことを話した。
「つくし、お前、美作とうまくいってるみたいで、よかったな・・・。」
「うん。ありがと。」
「亜門は特定の彼女とか作んないの?」
「・・・まっ、そのうちな。」
「まだ、“思いはいつか風化する“って思ってる?」
「そうでもないかな・・・。お前が道明寺の所へ行ったとき、すっげー勇気あるなって思ってさ。
結局、俺は自分が傷つかないよう、守りに入ってただけって気付いた。」
「はは・・・、まっ、結局、私は道明寺とはうまくいかなくて別れて、ボロボロだったけどね・・・。」
「でもな、お前は変わったぞ。
まずは、もう貧乏人に見えねえし、きれいになってんぞ。
美作に女にしてもらったんだろうが?えっ??言ってみぃ~。」
亜門が笑いながら、肩に手を回しからかってくる。
「な・な・何よそれ。そういう事言わないでよね・・・ったく。
確かに今の私は、道明寺とつらい別れがあった分、学んだことを糧にして相手を大切にしたいと思ってる。
一回きりの人生、悔いなく楽しみたいものね~。
男女の恋愛観って微妙に違うだろうけど、道明寺だって私と過ごした思い出を大事にしてくれてるって思うもん。」
亜門はわたしにとって、長い付き合いの戦友みたいで、生活の価値観も似通っているし、私が言いたいことは何でもわかってくれるから、一緒に居てとても楽チンなんだ。
「そうだな・・・。この先バンド活動どうすんの?あいつと結婚しても続けられるのかよ?」
「結婚なんて・・・・。」
先日の美咲ママの言葉が頭をよぎる。
ー“そろそろお嫁ちゃんになっちゃう?”―。
もし結婚したら私、バンドを辞めないとならないのだろう。
だって、嫁ぎ先が美作商事社長の家だもんね。
"結婚"
まず、思い浮かぶのは家柄の違いという厳しい現実。
そのせいでどんなに苦しんだことか、イヤと言うほど感じた思い・・・好いた腫れたで済まされない一枚の紙の重さ。
一般家庭出身、それも超がつく極貧だよ。
そんな最悪の条件でも、温かく迎えてくださる美作家の人々って、本当に稀で寛大な人達だと思う。
本当に私で困らないのだろうか?そんな考えが心を沈ませる。
「おい、つくし!お前、美作と付き合ってること、事務所から了解もらってんの?」
「え?了解って、何の?」
「俺らの曲、CMに起用されてんだろ。契約書に色々規定が書いてあったから。」
「は?なんて書いてあった?」
「いちいち覚えてるか。ややこしくなる前に、きちんと報告して、結婚する場合の規定とかちゃんと聞いて来い。」
「うん。わかった。ありがとう。」
そして、ようやく合宿が終了し、約一月ぶりに美作家に戻ってきた。
早速、暖かく迎えられ恒例のように宴が始まった。
「おかえりなさ~い、かんぱ~い。」
「どうも、ただいまです!でも、なんで、ここに西門さんや桜子と滋さん、それに甲斐さんまで居るわけ?」
「だから、お前たちの再会を祝して集まったんじゃないか・・・。あきら、牧野がもどってきたぞ、よかったな!」
西門さんに肩を組まれる美作さんは、受け流してる。
「せんぱい!桜子、嬉しいです。やっと、先輩と女同士の話ができるようになって・・・。」
「な・なにぃ・・・?」
どこまで知ってるのあんた?
「さあ、久々の感動の再会なんだし、あつい抱擁を遠慮なくどうぞ!!!」
「滋さん、そんなのここで出来るわけないじゃないですか・・・!」
「そう?別にいいのに・・・ねえ、甲斐くん。」
そう言いながら、滋さんは甲斐さんに抱きついて頬にブチューっとキスしている。
そんなあけすけな愛情表現が、ここ日本で、どうやったらスクスク育つのかな。
でも、皆、良い友達。
からかいながらも、今度こそ成就するよう応援してくれているのだ。
隣に座る美作さんと目が合って、小さく頷いてくれた。
美作さん、ただいま・・・帰ってきたよ。
次第に夜も更けた。
甲斐さんは滋さんを連れ、自分のマンションへ帰っていき、桜子と西門さんはそのまま美作家で泊まることになった。
それぞれ、部屋に別れ、私もシャワーを浴びた。
ベッドで横になっていると内線が鳴る。
「牧野、寝てた?」
「ううん。まだ・・・。」
「眠い?」
「ぜんぜん・・・。」
「じゃ、寝る前のキスもらいに行ってもいいか?」
「え?・・・うん・・・。」
程なくして、ドアをたたく音とともに美作さんが入ってきた。
私を認めるとまっすぐ一目散に歩いてきて、強く抱きしめられた。
顔を私の髪にうずめ、大きく息を吸っている。
厚い胸が動くたびに私の体が押されて息苦しくなる。
「お帰り、牧野。あー生き返った気分。」
この大好きな香り、私だって待っていたこの時を。
「美作さん・・・。」
背の高い彼の瞳を見上げながら、髪の毛をなでてあげて、頬にそっと手をあてた。
愛しい濃茶の瞳が私を捉え、近づいてくる。
軽いキスから始まって、すぐに深いものにかわっていく。
「牧野・・・ずっと抱きしめたかった。」
「私もだよ。」
「たった一ヶ月だけど、長く感じた。」
「うん。あっ、チョコありがとね。」
「あぁ・・・、あれは、桜子のお勧めチョコなんだとよ。」
「ふふ、桜子も心配してくれてるからね。」
「みんな、俺らのこと見守ってくれてて、幸せだよな?」
「うん。本当に。」
「なあ、俺ら、結婚しないか?」
「えっ?」
「今すぐじゃない、そういう事も考えておいてくれってこと。」
オヤスミのキスをおでこに落とし、美作さんは背を向けドアへ向かう。
それが寂しくて、親指と人差し指で美作さんの袖口をつかんだ。
そして、美作さんの焦茶の瞳に甘えてみる。
「牧野・・・?そんな顔されちゃあ、置いていけなくなる。折角、我慢したのに。」
手を引っ張られて、ベッドの側まで連れて行かれ、見つめ合い触れるか触れないかのキスから始まる。
会えなかった時間を取り戻すように、お互い性急に衣服を脱がし合った。
そして、恋人たちの甘い逢瀬を堪能した。
つづく
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