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20.
牧野たちはケーキのテーブルへ、そして、俺たちはF3で飲んでいた。
「な、類、お前らどうなってんだ?」と総二郎が口火をきった。
「何、総二郎?」
「はっきり聞くが、牧野に伝えたのか?」
「まだ。」事も無げに答える類。
「おい、類、牧野をほったらかしにして、フランスに行くのかよ!?牧野が可哀想だろう?女っていうのはな、好きなやつからの愛の言葉だけでも待てるものだ。」
「あきら、本当にまきのは俺のことが好きって思ってるの?」類が、心底意外そうな顔して聞き返した。
「 ・・?」
「ねえ、あきら、俺がまきののプロムのパートナーになるって知って、どう思った?」
「な、なんだよ!そりゃなるべくしてなったんだろうなって・・・。」
「ふーん、そう・・・抵抗なしか。なら悪いけど、俺はまきののパートナー降りないからね、文句言わないでよ!」
「は?文句なんて言ってないだろ!何なんだよ一方的に、類。」
類は、機嫌悪そうにグラスに入った水割りをがぶ飲みした。
一体どうして、しょぼくれてるのかさっぱりわからなかった。
あきらは一体何考えてんのさ。
まきのを好きなくせに、ちっとも気付いてないの?まきのの視線に。
好きになるタイミングを好きに出来るキューピットが本当にいたら、ありったけの金持って買収しに行くのに。
なんで、こうすれ違ってしまったんだろ?俺と牧野。
あきらを見る目「お兄さん」だけじゃない。まっ、まきの本人も気付いてないみたいだけど。
悪いけど、明日のプロムは独り占めさせてもらうからね。
フランス行く前に、それぐらいさせてもらうよ、あきら。
一方、あきらは、
類のやつ、何、怒って黙り込んでいやがる。
俺は、まきのを安心させてやってくれって言っただけだぞ。
そもそも類がいつまでも煮え切らないから、俺だってすっきりしないってもんだ。
司と別れ、類までいなくなったら牧野はどうなる?牧野が可哀想じゃないか。
類、牧野のこと好きなんじゃなかったのかよ。
「なっ、類もあきらも、お通夜じゃないんだぜ。
黙り込んでもなんも始まらないだろうが。飲もう!な?!」
総二郎が二人に真新しいグラスを渡し、茶色い液体をドクドク注いだ。
「じゃ~ん。」
私は、出来立てホヤホヤのCDを人数分取り出した。
「うわっ、それ、revolution'sのCDじゃないの?」優紀が気付く。
「あったり~。ちょっと早いけど、無理言ってもらってきたの。良かったら、聞いてください。はい、これ皆に。」
滋さん、桜子、優紀、西門さん、美作さん、花沢類に今までの感謝をこめて皆にCDを手渡した。
滋がCDを手にするなり、「きゃ~かっこいい~、甲斐さん。」とはしゃいでいる。
「え?なんて?滋さん、キーボードの甲斐さんと知り合い?」
「知り合いになっちゃた・・・、エヘヘ。」
「滋さん、なに?その妙な笑い。目がハートマークになってるし。」
「先輩に言いそびれてたんですけど、こないだギターのハルさんと甲斐さんと私たちでドライブに行ったんです。
ハルさんからやっとリターンいただいて・・・。ハルさんってお話も上手だし、イケメンだし、ちょっと遊んでそうだけど近くで見てもいい男ですよね。」
「ちょっと、いつの間にあんた達!ドライブ行っただけ?なんかされなかった?」
「先輩、大丈夫です。合意の下ですから。」
「合意って・・・。うっ、考えたら頭がいたくなってきた。」
信じられないって顔を作っていると、美作さんが言う。
「おい、まきの、このジャケットうまく撮れてるな。」
「でしょ?好評なんだよ。」
「本当にきれいになったじゃないか。」
美作さんは、ジャケットの中の私を見つめながら、つぶやく。
直接凝視されているようで、恥ずかしくて・・・。
「///やだ、美作さん、そんなに見ないでよ。////・・・。」
陽気な西門さんが助け舟。
「おっ、ついにデビューだな。revolution'sって革命って意味だろ?牧野、後悔のないように、思うようにがんばれよ!一期一会だぞ!!」
いつも思い出したように私の背筋を伸ばしてくれる人だった。
「このまきのも、かわいい。ありがと、フランスに持ってくね。」花沢類が優しく微笑んだ。
つづく
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