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19.
その翌々日、皆が美作邸に集まった。
「いらっしゃいませ、花沢様。皆様、お待ちです。」
「「類お兄さま、いらっしゃい~。」」
芽夢と絵夢が類にかけよる。小さなころから二人は、類のことがなぜだかお気に入りで、必ず近づいて類の顔を見上げる。
「フランスに行っちゃうの?」
「うん。」
「お友達とかいるの?さみしくなるね?」
「うん。」
「芽夢が会いに行ってあげるね。」
「ありがと。」
「絵夢も行ってあげるからね。」
「うん、ありがと。」と二人にニコリと微笑んだ。
小さな女の子と小さくない男の子の短い会話。
目にする光景が童話の世界にでてくるように可愛らしく、その場に居た者達はうっとり目を細め眺めていた。
類は、二人に手を引かれ広間に入っていった。
「あっ、花沢類!」と牧野が嬉しそうな笑顔で迎えてくれた。
「まきの・・・。」愛しいまきのの姿を見つめていると、
「類くん、いらっしゃい~。久しぶりね~。」とあきらの母さん。
「ご無沙汰してます。・・・」俺も、社会人になってから、挨拶は自然にできるようになった。
「お、もう一人の主役登場だ。類、準備で忙しいところ、よく来てくれたな。」
「あきら、退院おめでと。大した事なくてよかったね。」
「ああ、サンキュ」
「よし、まずは、乾杯だ!類のフランスでの活躍と牧野のミュージシャンとしての成功を祈って、乾杯!!」
乾杯をしてから、早速、食べ物をお皿にこんもり載せて牧野が戻ってきた。
「お前、すごい食い気だな。でもな、これからは周りの目も気にしないと、なんて書かれるかわかんないぞ。」と総二郎。
「だって、おいしそうな物がいっぱいあるんだもん。ねー、滋さん!」
「そうそう、“ガマンしたら戦はできない”これ滋ちゃんの格言。ねえ、つくし、後で美咲ママのお手製ケーキが出てくるんだって。」
「え?今日はなんだろう・・・、いつも楽しみなんだよね~。」
「先輩、revolution'sの歌姫のイメージ考えてくださいよ。百年の恋も覚めちゃうじゃないですか。どこで、フォーカスされるかわかんないですよ。
桜子のお皿みたいに・・・、」
「わかってるから!これからは、私も、意識して普段から色々気をつけるつもり。だから、今日だけは無礼講。ねっ?みんなの前だけね。」
まきのの後輩は俺のほうを向き、フランスにはいつ発つのか、どこに住むのか、何年くらいフランスに居るつもりなのか、どんな仕事するのかとか次から次へと質問してきた。 とりあえず、答えるけど大半が“未定“という返事をしたから不満足そうだった。
眠くなった双子を寝かせるとあきらの母さんたちは退室し、俺たちだけとなる。
少し静まった広間。
まきのの手から皿を取り上げ、リアクションを期待しながら顔を近づけた。
「///・・・っ?」
「まきの、なんか化粧変えた?」
「え?わかる?」
「目の辺がちがう。かな?」
「さっすが、花沢類。こないだプロのメイクアップアーティストの人がメイクする間、しっかり観察したんだ。
魔法かけられてるみたいに目が変わっていくのがおもしろくて、ずっと目を離さないで。今日は、ちょっと真似してみました!」
「俺もなんか牧野、色気づいたな~って思ったさ。」
「西門さん、そんなんじゃないんだけど。」
「先輩はせっかく白くてキレイな肌してるんですから、色んな発色を楽しめばいいんですよ。」
「今までも、メイクしてたつもりなんだけど、適当だったからね・・・ヘヘ。」
「つくし、やっぱり、デビューすると事務所からお化粧とかまでうるさく言われるもの?」
「滋さん、そんなこともないんだけど。」
まきのは、一呼吸置いてから話し出した。
「道明寺と付き合ってた頃は、そりゃ大変だったけどさ、ウジウジしない自分が好きだったの。
別れた後に、どうしてこんなことになったんだろうって堂々巡りみたいに考えちゃって、そしたら、頑張ろうって思っても、肝心な頑張る気持ちってどんなだったか思い出せなくなってた。
一度、考え込むと息するのも苦しくなって、そんな私なんて最低で。
ほら、私貧乏性でしょ?だから、何かに向かって走ってないとダメなのかな?
でも今はさ、すっごい頑張ってるって実感できる。
花沢類や美作さんや皆に支えてもらったこと、感謝してるよ。
こっからは、亜門にもらったチャンスを、精一杯頑張って掴んでみようと思う。どこまでできるかわかんないけど、とにかくがむしゃらにやってみようって思えたから。
お化粧も、バンドにとって大事だから欲張ってみるつもり!」
また、強い瞳を輝かせるまきのが帰ってきたのはとても嬉しい。
まきのには何度か度肝をぬかされ、すごい奴だと思ってるし、怯まず堂々と踏ん張る立ち姿は無性に惹かれるものがある。
強い信念を見せる牧野は、いつも俺の心を揺さぶる。
所信表明するまきのも、やっぱり好きだから、その笑顔は大切にしたいと思う。
俺は、手に負えないまきのに憧れてるのかもしれないな。
俺の大好きな笑顔でいっぱい元気をもらえる方が、嬉しい。
側に居て欲しいと牧野を困らせるのは、止めておこう。
やっぱり、俺はまきのに笑っていて欲しいから。
つづく
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