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17.
昼過ぎ、迎えに来た母親と一緒に、自宅へ戻った。
使用人たちまで笑顔で迎えてくれて、ほんのつかの間の留守が長く感じる。
「「「おかえりなさいませ。あきら様」」」
「「お兄様~!!おかえりなさ~い!!」」
芽夢と絵夢がダダダーッと走り寄ってくる。
「おっ、痛っ!芽夢、絵夢、ちょっと待て!」
「お傷のところ、包帯してるの?」と芽夢
「じゃ、看護婦さんになってあげる。」と絵夢
「芽夢が看護婦さんになるぅ。」と芽夢が張り切って言う。
「ふぅ~、やれやれ。」入院してたほうが良かったかな。
「まだ痛むんでしょう?あきらちゃん、もう心配させないでね~。」
母親は、感涙で涙目になっている。
「部屋で休むでしょ?」
「そうだな。」
まずは、ここから避難だ。
「牧野は?」
「出かけておられます。」
病室と比べるまでもないのだが、自室にはいるやいなや、センスの良さに心身リラックスできる。
たった一日の入院でそうだから、長期間入院後ならその感動はより大きいものだろう。
象嵌の机とキャビネット、ワイン色の皮のソファーセット、どれも俺の好みで設えさせた。
部屋の中央に置かれたクリーム色のベッドに横たわり、天井を見上げる。
見慣れた白い天井は、再び牧野のことを思い出させ、大きなため息を吐き立たせた。
「桜子、あんた昨日も合コンしてたのに、今日もなの?」
「当たり前です。桜子は、今が旬なんですから、家に閉じこもっていられません。滋さんこそ、食べてばっかりいないで、チャンスをつかむ努力したほうがいいですよ。
花の命は短いんですから・・・。」
「ふ~ん、そんなもんかなぁ・・・。」
「そういえば、花沢さん、とうとうフランスに行っちゃうらしいですね。牧野先輩、どうするんだろう。」
「類くんは、つくしに好きって伝えたと思う?」
「今の先輩、デビューに向けて頭がいっぱいって感じですもんね。花沢さんだって、告白しづらいですよ、きっと。 花沢さんと先輩って、ずっと一緒に居たのに、いままで何にも無かったんですよね、理解できません。」
「司と幸せになってくれるって思ってたのに。滋ちゃん、つくしだからあきらめたんだよ。」
「それは、私もですよ!」
「司、やっぱり婚約するって言ってた。」
「話したんですか?やっぱり、どうしようもなかったんですかね。」
「よし、もうこうなったら、どんどんおかわり頼んじゃう!食べるよ!桜子も一緒に!」
「桜子は遠慮しときます。私、すぐ身についちゃいますから・・・。滋さんの胃腸は、日本人じゃないですね、きっと。」
Trurururururururururruru・・・・・・・
「電話鳴ってるよ。桜子、どうぞ、出たら?」
「すいません。」
ピッ
「はい。」
電話の声はrevolution'sのギタリスト、ハルだった。
「ごめん、電話くれてたのに返さなくて・・・ずっと、レコードデビューに向けて忙しくてさ。」
「ハルさんですか?電話下さってありがとうございます!何度もメール送ってしまって、ご迷惑でしたよね?」
「嬉しかったよ。今、ひま?一人?」
「え?お友達といますけど・・・私なら、あいてます。」
「俺も連れと居るんだ。よかったら、一緒にドライブしない?」
「ドライブですか?」桜子は、受話器を片手で押さえながら、「滋さん、これから暇ですよね?」と確認する。
「はいはい!ドライブ、連れてってください。行きます!」
電話をきった桜子は、いそいそと合コンのキャンセルの電話をいれた。
それから、ハルたちと合流し、ハルの運転する車で、三浦半島までドライブした。
「あー、気持ち良いですね。ここ。」と砂浜を前に、桜子が伸びをする。
横にいた滋は、待ちきれないとばかりに、海に向かって突進していく。
「だろ?甲斐先輩と出会ったのは、この近くの高校。おれ、後輩なんだ。
そういえば、初舞台の日、楽屋に訪ねてきてくれた背の高いやつらとか桜子ちゃんたち、つくしちゃんと一緒の高校だろ?」
「滋さんだけ違うんだけど、私は先輩の一つ後輩。背の高いやつらって、一応F4って名が知られた人たちなんですけど・・・?」
「え?F4って、聞いたことあるよ。あいつらが、F4のメンバーか?」
「あと二人いるんですけどね・・・。」
それから、浜辺でしばらく遊んで、甲斐さんのおすすめの磯料理屋に行った。
「ちょっと、滋さん、甲斐さんを見る目がハートマークになってますけど・・・。」
「うん、桜子、久々のヒットかも・・・。さっきさ、海で甲斐さんと一緒に砂の城作ったの。
お城の下に穴を掘って、トンネルがつながったとき、甲斐さんの手とつながって、目が合ったんだ。その瞬間きちゃったかも・・・。」
「うそっ?それって、小学生じゃないですか・・・。」
三浦半島近海でとれた魚介類を堪能し、甲斐さんとハルの高校時代の話でもりあがったあと、「この後も一緒にいれる?」とハルが桜子の耳元に囁く。
顔を赤らめてうつむく桜子、肯定の返事だ。
その様子を見た滋は、むんずと甲斐さんの腕をとり、「私たちも!」と声高に名乗りをあげた。
「「「え?」」」
その後、4人の夜は甘く長いものとなる・・・。
つづく
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