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18.
トントン・・・
「美作さん、わたし。」
「どうぞ。」
そーっと、部屋のドアをあけ、中をのぞきこんでる牧野。
「まきの、おかえり。今帰ったとこ?」
「うん。」
「突っ立てないで、中に入れよ。」
「あっ、お仕事中だった?」
「ちょっと、気になる事だけ片付けてた。もう終るよ。」
「あの、退院おめでと。まだ痛む?」牧野は、心配そうに俺を見つめている。
「あぁ、少しな。司みたいに犬並みの回復力ないからな。ハハハ・・・うっ、痛!」
「だ、だいじょうぶ?」
「おぅ。でも、明後日には痛みも治まるだろうって。」
「美作さんを刺そうとした人、どうなったの?」
「傷害罪でまだ拘置所。俺の立場上、告訴しないわけにいかないが、うちの弁護士通じて、軽くしてもらうつもりだ。もとはといえば、俺にも負があったことだからな。」
「美作さん、私があれだけ忠告してあげたのに、すぐにやめなかったから罰が当たったんだよ。」
「おいおい、俺は被害者だ。あいつの女房とは、とっくの昔にきれいに清算してる。言っとくがな、牧野、俺はマダムとはもう一人もつきあってないんだぞ。そんなひまあるか。」
誤解は解かないと冗談じゃないと思った俺は、きっぱり言った。
『じゃ、やっぱり、病室に居た秘書と付き合っているんだ。』と勘違いされたことに気付きもしないで。
そのことに、気付くのはずっと後になってからだった。
「あ、あのね、美咲ママが私の卒業祝いしてくれるらしくて、それで、花沢類の壮行会も兼ねるのはどうかだって。美作さんの退院祝いも兼ねるのかな?」
「俺は、ついでかよ。まっ、軽い入院だったからいいけど。牧野の卒業祝いは盛大にしないとな。んで、類はいつ発つんだ?」
「卒業式の次の日だって。」表情が曇る牧野。
類に牧野はなんて返事したんだろうか。
バンド活動で当分日本を離れられないだろうし、類だってフランスに行ったら早々一時帰国もできないだろう。
牧野、お前はつくづく障害が好きだなやつだな。
「まぁ、心配するな。類がいなくなっても、俺らが相手してやるから。」
そう軽くジャブをかますのが、今の俺の立場だろう。
「//// 美作さん!」
つづく
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