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23.
「花沢類はこの場所来るの久しぶりなんじゃないの?」
「うん、懐かしいよ。まきの、寒くない?」
「大丈夫。・・・・私、この景色を時々思い出して、目をつぶってこうやって深呼吸するの。ほら、こうやって・・・。
するとね、不思議と流れを塞留めていた物が消えて、またちゃんと流れ出してくれるような気がするんだよ。」
「深呼吸だけ?叫ばなくていいの?ククッ・・・」
「もう~、あ・あれは、・・・・青春の1ページで、今となっては全部こやしになってるから、いいの!花沢類も忘れてよね!」
「俺は、忘れられないね。あんな強烈な思い出。今のまきのは、あの時のまきのも含めてあるんだろ?だから、忘れられないよ。」
「はなざわるい・・・。」
「ねえ、まきの、俺がフランスへ行っても平気?」
「花沢類、考えられないくらいショックだよ。」
またそんな悲しそうな目で見つめないで・・・。
近くの電灯に照らされた瞳は私だけを覗き込んでいて、花沢類のビー玉の瞳が揺れて見える。
私と花沢類の間の闇だけがさらに細かな粒子となって、熱い空気が漂う。
昼間だとわからなかったに違いない、でも今、この暗い静寂の中、目の前の男からあふれる出てくる思いが私にぶつかっているのが見えるようだ。
花沢類は、私を求めてるんだ・・・。こんなに、熱く強くまっすぐに。
よくわかる花沢類の気持ち。
でも動けないよ、苦しいよ・・・私は応えられない。
花沢類は私の一部だからこそ、言葉にするのが怖くて、返事が声にならず重い沈黙が流れている。
すると、お互い見つめあったまま、花沢類が近づいてくる。
一歩、また、一歩。
フワッ。
その胸の中に抱きしめられて、動くことも考えることも出来ない。
花沢類はその手の力をぎゅと強め、私の髪の毛に顔をうずめた。
柑橘系のやさしい香りに包まれて、鼻腔がくすぐられ脱力しそうになる。
顔を上げると、花沢類は目を細め、焦げ付くように見つめられ、そして、ゆっくり唇が落ちてきた。
何が起こったのかわからなかったけど、多分、小さな恋のメロディーのような可愛いキス。
「まきの、何も言わなくていいから・・・。ごめん。」
「・・・・・・。」
しばらく抱きしめられたあと、花沢類はそっと私から離れた。
「さっきのキス、餞別にもらった。ありがと。」
「はなざわるい・・・。」
「甘い香りがした。ピーチ味かな・・・?」
「///////・・・・・・・。」
「いっつも、“ありがとう”と“ごめん”って言われてるけど、今のでチャラだね。こうしてまきのにキスしてみたかったんだ。ご馳走様。」
少し口角を上げて、微笑む花沢類。
「な・なに言ってんのよ・・・!///」
何だったの今の?
心臓がいくつあっても足りないよ・・・、まったく。まだ心臓がドキドキいっているうちに、突然聞いてきた。
「まきのは、あきらのことが好きなんでしょ。」
「美作さんのこと?」
「そ。」
この話の展開には付いていけず、ずっこけそうな気がした。
「美作さんは、みんなのこと心配していつも助けてくれるいい人だよ。F4だって、美作さんがいないとバラバラで収拾つかなかったじゃない。
美作さんにはいつも大変そうだな~って同情してたけど、好きだなんて、ないよ。」
「あきらは、苦労症だからさ。」
「苦労症?」
「そう。貧乏性の牧野とちょっと似てる・・・ククク。」
「うーん、いわれてみれば、家族に振り回されてるところとか微妙に似ているかも。
美咲ママって、私から見てもかわいくて、永遠の少女って感じだから、美作さんが大人になるしかないんだろうね・・・フフッ。」
「最近あきら、ずっと忙しそうだね。」
「忙しくてもちゃんと、さすが、遊び人、秘書さんと楽しくやってるみたい。」
「秘書・・・?病室にいた人?そうあきらが言ってたの?」
「本人から聞いたんじゃないけど、マダムとはもう付き合ってないって言ってたし。」
「ふ~ん。」
花沢類は何か考え事をするような仕草をしてから、寒くなってきたから帰ろうと手早く運転手を呼んだ。
つづく
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