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選んでくれてありがとう

美作あきらx牧野つくし

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選んでくれてありがとう 26
eranndekuretearigatou26

26.

その日、建設会社の接待を受け、銀座の老舗料亭で夕食だけ共にし、帰宅した。
日付が変わる前に帰宅するのは、久しぶり。

同居してるとはいえ、俺の帰宅はプロジェクトのせいで午前様続き、このところ牧野とは会っていない。

たまには、牧野と酒を一杯やるのもいい。
好調なバンドのスタートの話でも聞かせてもらおうという気になって、牧野の帰宅を待った。

時刻はもう夜中の2時。
こんな時刻になっても連絡も無しか。


心配というよりなぜか腹立たしさがこみ上げて、おもむろに携帯をつかみ牧野を表示させる。

trururururuurururururru・・・・・・・

つながった先は、低い男の声だった。

「・・・だれだ、お前?」
「俺だ、国沢亜門。つくしは、今、俺と一緒に居る。」
「・・・・・・。」
「あいつ、よく眠ってるよ。どうする?」
「迎えに行ってもいいか?」
俺は、亜門がNOと言わないように願う。

「・・・・好きにしろ。」

住所を聞いて、急いで車を飛ばした。

扉が開くと、上半身裸の亜門が顔を出す。
チッ、牧野がいるんだから、何か上に着ろよな。


「牧野は?」

返事も聞かずリビングまで入らせてもらうと、ソファーで気持ちよさそうに眠っている牧野が居て、まずは安堵した。

「安心しろ、何もしてない。
こいつは仕事のパートナー、遊びの女じゃない。
取り扱いの難しいフェニックス・・・下手すると、大やけどするからな、こいつ。」

phoenix不死鳥か。
扱いを間違えば火傷するな・・・確かに。

俺は、亜門に礼を言い、牧野を大事に持ち上げた。
軽くて華奢なのに、触れるとやわらかく指が皮膚に溶けていきそうで、強く抱きしめて胸の中に閉じ込めてしまえたら、仕事のストレスからも解放されて夢見れるだろうと脳裏をよぎる。


うちへ戻ると、牧野の体をベッドに横たえた。

「ありがとう・・・・・。」と小さな声。

え?起きてるのか?
さっきの俺の密かな思いに気付かれたか?
けど、牧野は再び眠りの世界に戻り、溜息をつきながらそのやわらかな頬にそっと触れてみた。

目覚めた時、頭痛とムカムカの症状。
ひどい二日酔いだ。
昨夜どうやって帰りついたのかどうしても思い出せずで、亜門に電話して美作さんが連れ帰ってくれたと教えられた。

こんなことで、忙しい美作さんにまたもや迷惑かけてしまった。
お詫びに手作りのお弁当を差し入れすることを思いついた私は、大急ぎで準備して、そのお弁当を持って美作商事横浜支社にむかった。

ビルは見上げるほど大きく、改めて美作商事の規模を思い知る。
この最上階にドカッと座ってる美作さんなんて想像できなくて、まるで英徳にお弁当を届けるようなつもりでいた自分が情けなかった。

「あのぅ~、牧野といいます。美作支社長にお会いしたいのですが。」

受付嬢が訝しげに見るので、あわててDKNYのサングラスをはずして笑顔を作ってみる。

「申し訳ありませんが、アポイントをとっていただけかないとお会いできないことになっております。」
マニュアル通り完璧に答える受付嬢。

それもそうか・・・と思い、ソファーセットで携帯を取り出し美作さんに電話した。

「おっ、牧野?どうした?」
「あのさ、今、下に来てるんだけど・・・。」
「はあ?下ってこのビルの1偕か?」

「うん。受付の人がアポイントがないと美作さんに会えないっていうんだけど、渡したいものがあるから、どうしよう。」
「ちょっと待っとけ!」携帯がガチャっと切れた。


さっきの受付嬢が飛んできた。

「先ほどは大変失礼しました。こちらへどうぞ。」
今度は丁寧に頭を下げ、エレベーターホールに連れて行ってくれる。

ふかふかのジュウタンが続く長い廊下の先にある扉を開けてもらい、中をのぞくと美作さんがいた。
横には秘書の里美さんが立っていて、私を見て驚いているように見えた。


「牧野、めずらしいな。入れよ。」
美作さんは手を上げてくれて、ソファーの向かいの席に座る。

「あっ、ごめんね、突然。あの~、昨日はありがとうね・・・へへ。」
「お前どこでも寝るからな・・・まったく、気をつけろよな。」と口元が笑っている。
「お礼にお弁当作ったの。お昼まだでしょ?」
「お、サンキュ。久しぶりのボンビー食か・・・あれ、あの黄色やつ入っているか?」
「入ってるよ。基本・基本・・・。」

「どうぞ。」

里美さんが香りの良いほうじ茶を持ってきてくれた。


「ありがとうございます。いい香り・・・。」

「お弁当にはこちらが合うかと思いまして。」

里美さんが答えると、美作さんが里美さんに優しい笑みを向ける。

目の前で二人の視線が綺麗に交じり合い、穏やかな波動を起こしてるように思えた。
それが、自分の中のざわめきだったとその時はまだ気付かなかった。

つづく

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