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33.
美作さんは、時々、私を出先まで迎えに来てくれるようになった。
今日はコンサート企画で集まって、CM用の新曲の音合わせを終えたところで美作さんが顔を出した。
「よっ、牧野。終った?」
「うん、あと片付けだけだから・・・。」
当然のように返事する私をハルと修がひやかす。
「おっと、彼氏登場!つくしちゃん、最近色気づいたの彼氏のおかげかな~?」
「どうせ、色気なんかゼロでした!からかわないでよね。」
「色っぽくなってきたと思うよ~。宜しいことで、いいじゃん。」
修がなおも、からかい口調で言う。
「もう、やめてよね!まったく・・・」
そんなふうに言い合っている間、亜門は美作さんの所へ話しかけに行ったようだ。
「よお。今、アメリカ系輸入住宅販売会社のCMに起用されることになって、曲作りで大忙しだ。」
「牧野から聞いてます。CMの仕事か・・・順調みたいでよかった。」
亜門の次の言葉を待つ。
「で、お前さんには伝えておくが、その会社は道明寺グループだぞ。しかも、本社から出ているらしい。
多分、あいつが指示したんじゃないか?つくしから聞いているか?」
「いいや。」
「つくしとあいつの間に何があったのか知らねえけど、今のつくしは純粋に頑張ってるからな。」
「国沢・・・・。」
司はどういうつもりなんだ?
司の婚約報道からかなり経つ。
だが、結婚しない理由は牧野に未練があるせいなのか?
あの二人が別れたのは、俺たちにもショックだったし、司からの連絡はないままだ。
政略結婚を選んだ司に俺たちから連絡を入れることもなく、いつの間にか疎遠になっていたのが悔やまれる。
牧野はなぜ俺にそのことを言わなかった?
司のこと、完全に振り切れてるはずだよな?
そう思いあぐねていた最中。
「終った~?滋ちゃんだよ~」
滋が馬鹿でかい声でやってきた。
キーボードの甲斐さんってやつのところへ行って、いきなり抱きついていやがる。
まったく嵐のようなやつだ・・・。
その後、滋の扇動でみんなで飯に行くことになった。
「こないださ、NYで司に会ったんだよ。疲れてる様子でなんだか元気なくてさ。」と悲しそうに滋が言う。
「婚約者の人とは上手くいってないのかな?」つくしは心配そうだが、それ以上でもない表情に見える。
「相手の女性、いい人みたいだし、司のこと好きらしいから、司がその気になれば幸せになれそうなのに。やっぱり、司はつくしじゃないとダメなのかな?」
「滋さん・・・。」
「あっ、ごめん、ごめん、私はあっきーとつくしのこと応援してるよ。やっとつくしが幸せな顔見せてくれるようになって、本当に嬉しいもん。」
牧野は下をむいて黙ったまま、何か言ってやりたいけれど、言葉が見つからない。
「道明寺は過去の人。今の私は、美作さんじゃないとダメだから!」
「「・・・!?」」
顔を上げいきなり牧野が宣言する。
「よお!それでこそ、滋ちゃんの惚れたつくしだよ~。」
司を強く思う牧野を見ていただけに、牧野の過去に遠慮していた俺。
牧野の言葉が嬉しくて、いっぺんに心の中の遠慮も吹き飛び、今にも俺はフワフワと浮かんでいきそうだ。
牧野、お前はすごい奴だよ、たった一言で俺の心をどうにでも変えちまうんだから。
「あっきー、やったね。つくし、ハッキリ言うようになって、あっきーが変えたの?」
ひじでコツいて来る。
牧野はどうやら赤面しながら、サラダを口に入れようとしている。
俺はそのとき思った。
俺の中で、ケリつける部分を急いでやらなければいけないと。
つづく
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