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選んでくれてありがとう

美作あきらx牧野つくし

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選んでくれてありがとう 47
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47.

二人きりの夕食を済ませ、美作さんの部屋へ行った。

「ここから、きれいに星が見えるね。」 
「牧野、こっち向いて、手を出して。」
「右?・・・左?」
「どっちでも好きな方。」

差し出した右手首に高級そうな腕時計をはめてくれた。

「はい、これプレゼント。 特に何てことないけど、強いて言えば、俺とずっと一緒って思って欲しいから。どう、気に入った?」

「どうって、これ私に? これ、ブルガリでしょ、文字盤にダイヤモンドもついてるし、すごいよ。」
「俺もそのメンズを持ってるんだ。俺のは文字盤がちょっと違ってるけど。
ブルガリはイタリアで生まれたブランドで、ジュエリーもあるぜ。牧野がイタリア来たとき、一緒に見に行こうな。」

「こんな高価なものを・・・。もらってばかりだね、私。」
「そんなことないって。今日だって、おいしいご飯作って待っていてくれただろ、そういうの、凄く嬉しい・・・。
今日は、類の奴もいないし、牧野の揚げ出し豆腐をなんといっても独り占めだからな。」
手料理をほめられたのはやっぱり嬉しくて、笑顔を返す。

「そんな可愛い笑顔を見せてくれるのも、すごく嬉しいし。」
美作さんこそ、優しく微笑んでくれて、そして、抱き寄せてくれて、幸せにしてくれる。

「俺、これから牧野が側にいない生活に耐えられるかな・・・・。」とぽつりと言う。

「美作さん・・・、呼んでくれたら飛んでいくよ・・・、すぐ行くから・・・ねっ!」

背の高い美作さんの頭の後ろへ両手を回し、ぐいっと自分の肩まで寄せて、髪を何度もなでてあげた。

かがむような姿勢なのに、美作さんは何も言わず私にされるがまま、じっとしたままだった。

いつも完璧に見えて身体も大きな美作さんが、私の腕の中で幼子のようにじっとして動かない。
美作さんの寂しい気持ちが伝わってくるから、私もありったけの愛情で安心させて送り出してあげたかった。

私たちは、その晩、遅くまでベッドの上で話しをし、そして、お互いのぬくもりを忘れないように、明け方まで何度も何度も深く交ざりあった。

翌日、空港には西門さん・滋さん・桜子・優紀がきて、一緒にお見送りをした。

「あきら、後のことはまかせとけ!」
西門さんが私の肩に手を回しながら言う。

「おい、総二郎、牧野に指一本でも触れたら、縁切りだからな。」
美作さんがジロリと西門さんをにらんで言う。
こんな厳つい美作さんってレアだ。

「ヒュー、こえーな、マジになるなよ。」
「アッキー、滋ちゃんがつくしに悪い虫が付かないように、貼りついておくからって。」
「おう、よろしく頼むな。滋。」
「先輩は美作さんにメロメロですから、大丈夫だと思いますよ。・・・。」桜子が言う。

「そうか、桜子に言われると、そんな気がしてくるな・・・、ありがとうな。」

美作さんは私をそっと抱き寄せると、
「じゃあな、行ってくる。すぐ、来いよ。」
耳元でそう言って、頬に軽いキスを落とし、手を振ってゲートをくぐっていった。



「行っちゃった・・・。」
ポツリとこぼすと、優紀が手をつないでくれた。

「つくし、頑張るんでしょ?」
「そうだね。」
「それにしても、今日のつくし、誰だかわからないよ。」
「そう?これ、桜子に変装の指導してもらったんだ。」
「優紀さん、今日のコーディネイトは桜子の一押しですから。
ハンチングハットにアップした髪の毛を全部いれて、うっすら色の入った伊達メガネ。ナイロン系のオーバーコート。
Revolution’sのつくしだなんて、気付かれないでしょう?」
桜子が優紀の横で言う。

「そうですね、こういうお洒落な帽子を普通にかぶっている人、結構いますもんね。目立つようで目立たないかも。」

今日ばかりは空港でちゃんと見届けたかったから、桜子にお願いをした。

美作さんが言ったとおり、桜子は変装もなぜか得意で本当に助かる。

空港を出ると、スッキリとした青空が広がっていて、今日から始まる遠恋のスタートには最高の天気だった。

『よし、頑張るぞ!!』

それから一週間、あっという間にすぎた。

美作さんと入れ替わるように、健一パパと美咲ママが帰ってきたからだ。

「いやぁ~、つくしちゃんだね。一度、ちらりとお目にかかったことあるけど、覚えてくれてるかい?」
「はい。もちろんです。
・・・あの、美作さんのご好意でこちらに随分お世話になっておりますのに、きちんとご挨拶もせず、本当に失礼しました。牧野つくしと申します。」
「いいんだよ、つくしちゃん。今まで通り、ここを自分の家だと思って過ごしなさい。
お陰で、あきらも本気を出してくれたみたいだし、美咲や娘達も喜んでいる。
僕が帰ってきたからと言って出て行かれちゃあ、皆に総スカンをくわされるからな・・・ハッハハ・・・。」
「あなた、つくしちゃんの歌声って、すごくきれいなのよ。若々しく伸びやかで。」
「そうか、じゃあ、夕食の後、何か歌ってもらわないといけないな。」
「は・・・?」 

お金持ちのこの方たちは、この手のことを一度言いだしたら、私が何を言っても暖簾に腕押し。

案の定、アカペラでrevolution’sの持ち歌から英徳の校歌まで歌わされ、最後の方は、大層ご機嫌な健一パパが日本の懐メロソングを歌いだし、お陰ですっかり和やかなムードになり、こうして健一パパと呼ばされることになった。

健一パパは見た感じは美作さんに似ている。
けど、とても豪快で強引、そして懐メロ好きなことがわかった。

そして、今、私はなぜだか、健一パパご一行と一緒に軽井沢の別荘にいる。

美咲ママからお庭を一緒に見ましょうと半ば強引に誘われて、オフを奪われたのだ。

私が寂しがらないようにと美咲ママの配慮が嬉しい。

夕食後、美作さんと歩いたお庭をのんびり歩いていた。
すると、庭のテラスのリラックス・チャアーに先客の健一パパがいて、一緒に座って話をした。

「あきらと会えなくてさびしくなった?」
「まあ少し、・・・////。」

「あきらには、小さい頃から色んな教育を受けさせた。
つらくても将来きっと役立つと思ってね。
何をやらせても文句を言わない子でね、留守がちだった僕の代わりに、美咲にも優しく接して、まだ小さかったのにわがままも言わず、色んなものを受け入れようとする子どもだったんだ。

僕はね、そんなあきらに感謝しているんだよ。
美咲があんなだろう?なのに、仕事が忙しくて、あきらに任せることが多かったし、小さな娘たちの父親代わりもしてくれている。
だから、あきらが選んだ人がどんな人であろうが、迎え入れてあげようとずっと思っていた。」

「健一パパ・・・。」
「イタリアでつくしちゃんのことを話すあきらは、真剣な顔してたよ・・・反対するつもりなんてなかったのに、心配だったんだろうな・・・クククッ。
あきらは、自分を抑え過ぎるところがある。
それを分かってやって時々開放してやって欲しい。これからのあいつには側で支えてやってくれる人が必要なんだよ。
つくしちゃんだったら、何も心配ない。これからもあきらのことよろしく頼むよ。」

健一パパはそう言って、美作さんみたいな優しい笑みを浮かべた。
こんなに素敵なお父様から愛情をいっぱいもらってたんだね・・・美作さん。

「はい。こちらこそよろしくお願いします。・・・」

胸がいっぱいで、これだけ答えるのが精一杯だった。

つづく

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