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48.
その夜、どうしても美作さんの声が聞きたくなって、電話をかけた。
向こうは、昼間のはずだから仕事中だろう。
でも、こんな気分のまま我慢してると、遠恋は続かないって思う。
Trurruuuuuuu・・・・・・trurururuururu・・・
「牧野?」
「あっ、美作さん。ごめん、仕事中に。」
「いや、大丈夫だ。どうした?」
「別に急用じゃないんだけど・・・さっき、健一パパと色々話をしてたら、なんだか美作さんの声が聞きたくなってさ。」
「うん?何を一体話してたんだぁ?どうせ、ろくな話じゃないだろ?」
「いいお話だったよ。」
「どんな?」
「小さい頃の話とか。美作さんのことよろしくって頼まれちゃった。」
「で、牧野は何て答えたの?」
「そりゃ、こちらこそ・・・みたいに。なんだか、今、胸がいっぱいだよ。
ねえ、美作さん、約束してくれる?私の前でいろんな事我慢しないで欲しいし、たまには我侭も言って欲しいからね。
私は美作さんのことなんでも受け止めたいの。」
「そうか、わかった・・・ふっ。お前だって、溜め込むなよ。
じゃあ、早速だけど1つ。俺、牧野に早く会いたい。」
「えっ、まだ一週間しかたってないよ。・・わ・わかったよ、オフの日、調べておくから。」
そこで用事が入ったらしく、慌しく電話を終えた。
事務所でコンサート企画会議の後、マネージャーをつかまえオフをお願いしてみる。
すると、2・3日まとめて休めるのは、ナント早くて一ヶ月先だという。
「えっ、それじゃあ困るんです。なんとか、もうちょっと前に。」
「ラジオ収録とライブも入ってるし、新曲予定もいれてますから、2・3日の休みは無理ですよ。」
後藤田マネージャーに頑と言われた。
一ヶ月に一回会う約束は何だったの?こんなのじゃ、、初っ端(しょっぱな)から無理。
しかも、私から破ってしまうことになるとは思ってもなかった。
今後のスケージュール作成では、できるだけオフをまとめて欲しいと後藤田さんに頼み込んだ。
けれども、後藤田さんは難しそうな顔で、あまり期待しないように釘を差す。
どうしよう・・・。
約束したのに・・・。
へこんでしまうよ。
そこへ、亜門がやってきた。
「休みの調整?」
タバコに火を点けた亜門。
「うん。美作さんに会いに2ヶ月ごとにイタリアいくのって、やっぱ無理なのかなぁ。」
「その約束自体が無謀だろ。美作だって、そんなにひんぱんには帰国できないだろうし。」
「へ?そう思う?」
「移動時間だって半日かかるし、時差だってあるだろ?日本国内の移動と訳が違う。」
じゃあ、現実的にどのくらいのペースなら会えるのだろうか。
「まずは、目立たないようにしておけば?これ以上、イタリアの彼氏を泣かさないように。」
その日から、亜門は私の愚痴を聞いてやるからとご飯に連れて行ってくれるようになった。
Revolution’sの人気は公式ファンクラブの会員数がうなぎ上りであることからもわかる。
この流れに乗って、更なるファンクラブ会員獲得へ向け、会員のみへ配布する写真集を作成することになったらしい。
カメラマンがライブ中や練習の休憩時にもへばり付いて、休憩中にもカメラマンはシャッターを切っていた。
「なんか、つくしさんと国沢さん、いい雰囲気ですね。二人だけ違う空気を感じるな。これ載せたら、絶対ファンのブーイング食うね。」
「じゃあ、サービスだ。」
亜門は言いながら、私を抱き寄せ、頬にチュッと口を寄せた。
カシャッ、カシャッ
「ちょ、ちょっと、亜門。こらあ~。」
「ただの愛嬌だから、そんなに反応するなって。」
「もう、まったく~。」
この時は、この写真が事件のきっかけを起こすことになるとは思いもよらなかった。
いよいよ、待ちに待ったオフの日となり、私は美作さんに会いに行くため、いそいそとミラノ行きアリタリア航空機に乗り込んだ。
到着ロビーには美作さんが待っていて、顔を見るなり長い腕で引き寄せられ、強く抱きしめられた。
私もこうやって抱きしめて欲しかったくせ、照れて素直になれない。
「美作さん、人が見てるし・・・。」
でも、お構いなしの美作さん。
「牧野、やっと会えたんだぜ。会いたかった。」
さらに、腕の力を強められ、離れたかと思うと、唇に濃厚なキスを落とされる。
「はぁ、ちょっと呼吸が・・・。」
やっと解放され、肩で息する間もなく腕を引っ張られた。
「さあ、行こう。」
「どこに行くの?」
「俺んち。」
車が着いたところは、ミラノ市内のアパートメントだった。
「ここは、俺のアパート。あまり広くないけど、会社から近いしここで寝泊りすることが多いな。」
美作さんは、また仕事に戻らなければならないらしい。
部屋でゆっくりしておくよう言い残し、サッサと片付けてくるからと出かけていった。
「ふう~、美作さんやっぱり忙しそう。お屋敷じゃなくて、ここに住んでるんだ~、もったいない。」
お部屋を見て回ると、ベッドルームが3つあった。
どこが狭いのよ。
家族でも住める広さじゃないの。
何気なく窓の外を見ると、初めてみる光景にびっくりした。
視界に映る何てキレイな建物。
その建物の屋上には王様の冠みたいに周りに槍みたいなのが一杯立っていて、目を奪われる。
槍みたいなものの間に、動く人影が見える。
あんな高いところまで、人が登れるんだね。
違う方角にもヨーロッパの建物らしい塔みたいなものが見えて、改めて、イタリアに来たことを実感し、あと何時間かしたらまた美作さんとゆっくり過ごせると思うと心が弾んむ。
荷解きを済まし、その時を待つことにした。
待っていると、美作さんからのメール着信。
“冷蔵庫の中のもの適当に食べて、先に休んでいて。あきら”
仕方ないと自分に言い聞かせ、テレビのスウィッチを入れ、番組を見ることにする。
もちろん、私にはイタリア語はちんぷんかんぷんなので、美作さんが帰ってくるのがとても待ち遠しかった。
つづく
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