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選んでくれてありがとう

美作あきらx牧野つくし

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選んでくれてありがとう 52
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52.

イタリア支社の主要貿易商品である薬品会社との話がごたついて、今月もオフをとることができないでいる。

牧野に会いたい・・・。

あの瞳が見たい。
折れそうな細い体をこの手にかき抱き、甘い香りを存分に吸い込みたい。

手に取った雑誌には、牧野のバンドがオリコンチャート下半期ベスト20に最も長く留まり続けたと伝え、バンド全員の写真が数ページにわたり掲載されている。
亜門の横にペタリとくっついて、その顔には満面の笑顔をたたえている牧野。

なんて愛しい顔だろう・・・写真のあいつをゆっくり指でなぞり、肌の感触を思い出そうとする。

写真の牧野は細い身体のままだが、いつの間にか女らしいラインを帯び、男を誘い、今さらながら、自分が与えた変化に熱いものがこみあげてくる。

透き通るような白い肌は、ゴツゴツした男達の中にいると浮かび上がるようで、新雪のように清らかに見える。

囲まれてるのは、気に喰わないぞ。
その黒くて大きな瞳は、見る者の視線を釘付けにすることだろう。

その唇は、俺だけが知る麗しい嬌声を出すために艶やかに光っているというのに、その果実を味わうことができない。
牧野だって、俺と同じように会いたい気持ちを必死で紛らわしているはずだ。

また、今月も会えないのか・・・。

苦しい思いを胸にしまい、仕事をこなす日々が続いて、もう限界が近いかもしれず、せめて今夜は夢の中で牧野に会えるように願い席をたった。

今日のコンサートもチケット完売だ。

新曲のお披露目舞台だから、少しナーパスになってる私。
恋人と会えない寂しさを綴った自作の曲で、CDシングルになることも決定し、プレッシャーも相当。
間違えるんじゃないか心配だ。

「亜門、心臓がドキドキしてやばいよ。」
楽屋でギターをいじってる亜門は、目線を上げて、いつものクールな口調で言う。

「誰も取って喰うようなことしないから、いつも通りで行け!新曲を思い切り聞かせてやれよな!」
「それは、わかってるんだけどね、なんだか落ち着かないよ。」

亜門はその涼しげな瞳で私を見つめて、人差し指を曲げ、手招きをした。
側にいくと、私の両肩に手を載せ、目を見つめながら言う。

「あいつの事を想って作った曲なんだろう? あいつが聞いていると想って歌ってみぃ・・・!それでも緊張するか?」
「そうだね。作った時の気持ちで歌えばいいよね。」
亜門は私の肩をポンポン2回たたいた。

そのおまじない(?)のお陰か、今日のコンサートもおおいに盛り上がった。

予定通りアンコールで、いよいよ新曲を披露する。
そこに居るはずのない彼(ヒト)に向かって、思いを込めてしっとりと歌い上げると、観客から大きな声援が聞こえて感激だ。

歓喜の声に包まれながら、高揚した身体を自分の両手でぎゅっと抱きしめ目をつぶる。

今、一番会いたい彼を想う。

今、美作さんの腕の中で、やさしい笑顔を見上げることができたら、どんなに幸せだろう。

私が、美作家のダイニングで遅い夕食をいただいていると、健一パパが入ってきた。

「あっ、健一パパ、お帰りなさい。」
「おや、一人で夕食かね?どうした、元気ないようだね。疲れているのかい?」
「はい・・・。帰宅が遅かったものですから。」
「では、一緒にいただいてもいいかね?」
「も・もちろんです。」
健一パパは、使用人に軽いものを持ってくるように言って、イスをひいた。

「どうだい?仕事は?」
「お陰さまで、順調です。私の書いた作詞・作曲したものがCDになったりもして。」
「revolution’sっていうバンドだったね、人気があるらしいじゃないか。
つくしちゃんが、作った曲はぜひ聞いてみたいな。」
また、アカペラで歌わされるのはかなわないので、持っていたCDをカバンから取り出した。

「ちょうど、一枚ありますから、よろしかったら聞いてみてください。」
「いただいていいのかな?ありがとう。」
「ちょっと、恥ずかしいな。」
「題名が、ううん?ホホウ、そうか・・・、これはあきら思って書いた曲なのかな?」
「///////・・バレバレですよね・・・。ハハハ・・・・。」
きっと、私の顔は真っ赤になっている。

数日後、美作商事イタリア支社長宛に、社長より社内便が届いた。

その中には、一枚のメモと一緒にCDが入っていて、メモにはこう書いてある。

あきらへ
ちゃんとつくしちゃんを捕まえておきなさい。
健一

帰宅後、早速そのCDをあけ、愛しい人を想い会いたくてたまらないと語りかけるのあいつの声を聴いた。
この曲の題名どおり、『あなたの腕に閉じ込めて・・・』と胸に届く。

牧野の小さな叫び声。
あいつの痩せ我慢が可愛くて、抱きしめてやりたい衝動が走る。

俺の体を優しくなでるように語りかけ、疲れた身体を優しく包む。
まるで、そこにいるような錯覚に捕われると、今すぐベッドに連れて行きたくなった。


『牧野・・・会いたい・・・。』

俺は、シャワーを浴びそれから机にむかった。

つづく

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