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53.
家に帰ると、美作さんから一通の手紙が届いていた。
牧野へ |
こうして牧野へ手紙を書くのは初めてだな。 でも、牧野が迷わないように俺の思いを書こうと思う。 イタリアと日本との間には、距離と時差があって、牧野には淋しい想いを させていて、本当にすまない。 俺の全ては牧野を欲していて、離れている時間が拷問のように苦しい。 幸せそうに肩を寄り添い歩くカップルを見れば、 牧野のぬくもりが恋しくて、出来ることなら、地中を通り抜け 牧野の元まで抱きしめに行きたくなる。 許されるなら、牧野を永遠にこの腕に閉じ込めてしまい、 愛し合い、ずっとつながっていたいと思うのは 愛しすぎた愚かな発想だろうか? 昔、牧野が言ったように、俺は月みたいだろ? 太陽が輝いてくれるから、月も輝けるのを忘れないで欲しい。 俺の太陽は牧野だ。牧野の居ない人生なんて、星屑にも値しない。 全身全霊こめて牧野を愛している。 全能の神に永遠の愛を誓う。 牧野が淋しく感じるたびに、俺の血肉は飛散し痛みを感じるだろう。 だから、迷わないで欲しい。 俺の牧野への思いは、鋼(はがね)より硬く真っ直ぐで、 微塵の緩みもあり得ない。 この腕は牧野を抱くためにあるのだから、 姿が見えなくても想像して感じて欲しい。 俺は、いつも牧野のことだけを想い、 夢の中で抱きしめている。 |
美作あきら |
手紙を読み終えると、涙がこぼれていた。
美作さんの私への深い愛情が淋しかった気持ちを暖めて、結ばれてる思いを何倍も大きくゆるぎないものに変えていく。
美しく並べられただの文字の羅列なのに、まるで美作さんが側で語ってくれているような温度を感じる一枚の紙。
こんなにも必要とされ愛されている。
手紙っていい。
改めて知る美作さんの愛情に力をもらい勇気をもらえて、そして、それをいつでも持ち歩けるのだ。
あいかわらず多忙な私たちが会えるのは、2ヶ月に一度会えればよかった。
でも、遠距離恋愛は上手く続いている。
あの時は、抱きしめて欲しい思いが高まるほど、寂しくてつらくてやるせなくて悲しくて、ダメな私になりそうだった。
そこへ、届いた美作さんのラブレターは、文字通り愛にあふれた手紙だった。
思えば、あれは私の甘えが出て、スランプの時期だったのだと思う。
あれから、私は手紙をお守り代わりにしている。
そして、今日、待ちに待った美作さんの一時帰国の日を迎えた。
昨夜から、眠れないほど待ち遠しくて、変装して空港に迎えに来た。
到着ゲートから次々に人が出てくる。その中に、一際背の高い柔らかそうなウェーブヘアの美作さんの姿を捉えると、美作さんも気付いたようで、こちらに向かってくる。
3m、2m、1mと距離が縮まり、ついにその長い手に引き寄せられて腕の中へ。
『あー、もう死んでもいいくらい幸せ。』
全ての細胞が活性化を始める。
「牧野・・・・、会いたかった。」
美作さんにきつく抱きしめられ、息が苦しい。
「く・苦しいよ。」
「ごめん、ごめん。」
美作さんは、わたしの顔を愛おしそうに眺めてから、耳元で言った。
「二人だけになれる所へ行こう。」
そして、リモに乗り込み、そのまま空港近くの3ツ星ホテルにチェックインした。
エレベーターは、グングンすごい勢いで上昇する。
部屋の前でカードキーを差し込み、グリーンランプが点灯すると、美作さんはニッコリ微笑んでドアを引いた。
上着を脱ぎソファーに腰掛け、私を見つめる美作さん。
「何?・・・何かついてる?」
「いいや、本当に牧野だ・・・と思って見てるだけ。」
「そ・そりゃそうだよ。」
「牧野、一緒にお風呂に入ろうか・・・。」
美作さんがいきなりとんでもないことを言い出した。
「だめだよ、それだけはダメ!恥ずかしいよ。」
男女の関係になって久しい上、私の体を隈なく熟知されている相手なのに、今さらだけどなぜか恥ずかしい。
「何で?二人でゆっくりしたいと思って。体、流してやるよ。」
美作さんは、濃茶の瞳で私を見つめたまま、まるで妹たちの世話をするようにサラリと言う。
「・・・んじゃぁ、あとから入るから、先に行ってて///。」
美作さんがバスルームに消えてしばらくしてから、勇気を出して入っていった。
「牧野、隠すなよ・・・全部見せて。」
美作さんは、容赦なくそう言う。
美作さんの厚い胸板には程よく筋肉が付いていて、たくましい上腕筋が目に入る。
こんなにたくましい腕に閉じ込められたら、抜け出せないだろうな・・・とふと思う。
タオルにいっぱいソープをつけて、壊れ物を扱うように丁寧に体を洗われて、眠たくなってきた。
「寝るなよ!」
美作さんに頭を小突かれた。
「だって、気持ちいいんだもん。じゃあ、今度は私が洗ってあげる。」
成人男性の体を洗うのは初めてで、手順がわからない。
「えっと、どこから洗って欲しい?」
「はぁ?別にどこからでもいいから、好きなところからどうぞ。」
私は迷うことなく美作さんの胸元にそっとタオルを落とし洗い始めた。
「ふ~ん、牧野は俺の胸が好きなんだ。」
「/////// うん。大好き・・・。」
本当に大好き、この胸の上に顔を寄せると、安心するから。
そして、二人で向かい合って湯船につかった。
水に濡れると、まっすぐになる美作さんの髪の毛。
美作さんのオールバックは久しぶりで、じっと見入ってしまう。
端正な顔立ちだから、それこそ水も滴るいい男でくやしいくらいだ。
こんないい男の前にいると、私なんか、濡れネズミみたいに貧相に見えるのではないだろうか・・・と心配になるよ・・・。
「牧野、こっちおいで。」
美作さんに後ろからスッポリ抱きすくめられる形になって、あつい吐息が耳元にかかる。
「はぁ~、牧野とこうして、やっと落ち着いたよ。俺、今回は、かなり応えた。
何度、仕事を放り投げてやろうと思ったことか。でも、そんなことしてもその場しのぎだもんな。」
「私だって、そうだったよ。でも、あの手紙もらってから、復活したの。
どんなに電話で話していても、少しづつ薄れていったぬくもりを、また手紙が思い出させてくれて、元気が出た。手紙に書いてくれた言葉、すっごく嬉しかった。宝物だよ・・・。」
美作さんは、私の顎をくいっと自分のほうに向けて、軽いキスからはじまり、だんだん深いキスをする。
口元でつながれた私たちは、その暖かく柔らかなお互いの果実をむさぼり始め、小さな拗音がバスルームの中で卑猥に響き始めた。
そして、熱い男のまなざしに捉えられた私の体も否応なく、ほてり始める。
美作さんは立ち上がり、バスタオルを手に取り私の体を包み、抱き上げてベッドに運んだ。
「一緒に行こうな。」
「//////////。」
「うん」の一言が、胸がいっぱいで声にならなかった。
つづく
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