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55.
めずらしく、フランスにいる類から電話があった。
「おう、類、久しぶりだな・・・。元気か?」
「うん。あきらも元気だった?」
「何とかやってるよ。」
「もうじき一時帰国するんでしょ?まきのが、嬉しそうに言ってた。」
「筒抜けかよ。まあ、そのつもりだけど、まだ帰れるかわからない。」
「イタリアのエミロン社のせい?」
「ああ・・・。そういえば類のところも狙ってるんじゃなかったのか?・・・。」
イタリアの宇宙航学技術は目覚しい進歩をとげており今では世界でトップレベルだ。
中でもエミロン社はめざましい飛躍をとげ急成長している。
そこで、その技術の仲介役を得るためなんとしてでも業務提携を結びたいと考えて奔走しているところだった。
「だって、その話、あきらのところに決まりでしょ?」
「まだ、締結してないから、なんとも言えないな。」
「じゃあ、当分、日本へ帰れないね。ねえ、あきら、まきのと離れたままでいいの?」
「あいつには、やりたい事をやらせてやりたい。」
「いつまで?」
「わかるか、そんなの!牧野次第ということだ!」
「ふ~ん、牧野次第ね・・・。あきらって、本当にやさしいよね。」
「俺も、当分忙しいし、急がなくてもいいんじゃないかと思ってる。」
「あきらは、司が婚約者と結婚しない理由わかってるでしょ?
すごいよね、5年近く待ってる相手も。」
「ああ、わかってるつもりだ。」
「一回、司に、ちゃんと謝っておけば?」
「どうして俺が謝るんだよ! 第一、それは自分自身に対するけじめと思ってるからだろうが。俺が口出しすることじゃないだろ。」
「だって、どう見てもあきらがのんびりしているせいに見えるから。」
「はぁー?どうやったら、そう見えるんだよ、まったく・・・。」
俺だって、一日でも早く牧野と暮らしたいさ。
今の俺はイタリアを離れることができないのだし、仕方ないじゃないか。
今日は、雑誌社によるインタビューと撮影が入っていた。
Revolution’sはテレビに出演しない代わりに、雑誌のオファーはウェルカムで受けている。
インタビューが中盤に入り、くだけた質問にかわる。
「ファンの一部で、亜門さんとつくしさんが寄り添う場面が多く見られるので、実は付き合ってるのではないかという噂がでていますが、ぶっちゃけ、どうなんですか?」
「な・ないです!!!絶対に!」
びっくりした私は即座に否定した。
「つくしとは、かなりの腐れ縁っていうだけですから。」
亜門が笑いながら言う。
「腐れ縁ということは、昔は、そういう関係だったとか?完全否定しないってことですか?」
首を振る亜門。
メンバー全員、私が誰と本当に付き合っているのか知っているから、内心ニヤケていたと思うけど、もちろん誰も口を割らない。
そこで修が、急に口をひらく。
「バンド内恋愛禁止ですから、絶対ないですよ!だって、やりにくくなるじゃないですか・・・でしょう?」
一同、修に頷いていた。
甲斐さんは「無い、無い」というように、手と首を振っている。
確かに、スキンシップは精神的に癒され、楽しさに変わることを経験的に知った。
「いつでも胸を貸すぜ・・・。」といってくれる亜門にハグをすることも多いし、横にいる事も多い。
亜門はいつも胸を広げてくれるけれども、それは、決して美作さんの代わりではなく、亜門と私の歴史が作った心のふれあいといったらいいのかな。
亜門といると、何かと楽だし、色んなことを知っているから頼りにもなる。
でも、この微妙な関係は簡単に話せる内容じゃないし。
けど、亜門は異常にモテるのだから、熱狂的女性ファンから刺されないか?私。
げっ!やばいよね・・・そんなの冗談じゃない。
仕事の帰り、亜門を捕まえて一言忠告。
「私、亜門のせいで目の敵にされるかも、やだよ、そんなの!!」
「??」
「あのさ、これからは、誤解されないようにちょっと気をつけようってことよ。」
「ああ、噂のこと?あんなの気にするな!」
「気にするなって。亜門はなんではっきり否定しなかったのよ?」
「俺は、結構、腐れ縁楽しんでるから。」
「どういうことよ?」
亜門は私を一度見つめてから、目をそらす。
「つくしが、橋を渡り損ねた時には側に居るっていうこと。」
「橋を渡り損ねる?」
「別に考えなくてもいいから、じゃあな。あっ、また、あの金平作ってくれよな!」
私の髪の毛をクシャっとかき回して、帰っていった。
橋を渡り損ねた時って・・・、亜門だって今や橋の向こうの人みたいなもんじゃない。
知り合った頃の亜門は、もっとクールで何かをあきらめた感じで冷たい印象だった。
今の亜門は大人の落ち着きと程よい暖かさを兼ね備え、第一印象は100%ずっと良くなってる。
亜門には、いくら感謝しても足りないくらいだ。
こんなに夢中になれる仕事を教えてくれて、私のことも見守ってくれている。
ありがとうね。
亜門のお陰で、新しい世界を知れたんだよ。
再会、万歳だ。
つづく
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