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選んでくれてありがとう

美作あきらx牧野つくし

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選んでくれてありがとう 56
eranndekuretearigatou56

56.

花沢類が私たちのことを心配していると、美作さんから聞いた。

電話越しに話をするだけでも、なんだかとても和める人。
無性に声が聞きたくなって、携帯を手にとった。

Trurururururururu・・・・・・・trrururuurururuu・・・・・・

「はい、あっ、まきの?」
「うん、花沢類、元気?今、忙しい?」
「ううん、牧野からの電話はいつでも歓迎。でも、めずらしいね、こんな時間に。」

「うん、ちょっと花沢類の声が聞きたくなって。」
「どうしたの?まきのがそんなこと言うのめずらしいね。
俺もまきのに愚痴でも聞きいてもらいたいって思ってたところ。」
「ふふっ、嘘ばっかり。花沢類はそんなこと無いでしょ。」
「・・・あるさ。」

「そういう時は、ライブにでも行ってガンガン盛り上がるといいんだよ、フランスのお勧めバンド、亜門に聞いておくね。
瞬間、嫌な事もビューンって吹っ飛ぶんだから。」
「クククッ、まきのが言うと本当に飛んでいきそう。」
「そうだ、花沢類、今度いつ帰ってこられる?来月末、revolution’sのライブ予定だよ。
日にちが合えばおいでよ。」

その頃、日本出張が入っているらしく、スケジュールが合えば、見にきてくれることになった。
折角なので、西門さんや桜子や優紀も招待しよう。

「美作さんも帰ってくるって言ってたから、みんなで一緒に会えればいいよね。」
「あれ?まだ聞いてない?あきら、一時帰国、無理かもって。」
「え?」
「?」
「・・・・うん、聞いてないよ。」
「じゃあ、まだ決まってないんだよ。」

「美作さんと最後に会ったのはいつだったかな?5ヶ月くらいたつかな~。ハハ・・・だんだん、数えるのが面倒になってきたよ。」

「まきの・・・。」
「心配しないで。美作さんとはちゃんと連絡とれてるから。
遠距離恋愛ベテランの域に達すると、一喜一憂しなくなるんだよね。」
「まきのは、それで幸せ?」
「幸せだよ・・・。」

花沢類にそんな風に聞かれると、泣き出したくなる。

「俺、まきのが笑っている顔が好きだからさ。」
「うん、知ってる。ありがとう、花沢類。」

カレンダーをめくると、すぐにライブの日がやって来た。
今日のお客のノリはとても良くて、喋りやすかった。
ステージトークの神様が乗り移ったようにポンポンはずみ、ステージ終了後もテンションあがりっぱなし。

「イエ~イ、メッチャ最高だったぜ~」
ハルがギター片手にハンド・ファイブする。

修はスティックをクルクル激しく回してドリンクをがぶ飲みし、上半身裸の甲斐さんと亜門がハグし合うのはいつもの光景。
汗で光る二人の体から発熱しているようで、楽屋は興奮の汗とコロンとドリンクが交じり合った独特の匂いが充満している。

熱いステージの余韻はなかなか引かず、私はいつものように亜門にハグをねだり腕を広げた。
それはいつものコースをたどるように、戸惑いなく身体が動いていく。
亜門も応えてくれるわけで、自然に強くムギュッと抱き合うと、改めて安堵と喜びを感じられるから大好きな瞬間なのだ。


「今日、すっ~ごく気持ちよかった~もう気分最高!これは病み付きになるわ。」
「おう、声も調子よかったな。」

その時、背後に小さなノックがして、誰かが入ってきたようだった。

すると、亜門は急にハグを解き、ゆっくり私の両頬に右手と左手を置くと、そこだけ涼しげな眼差しを私の瞳に固定して動かなくなった。

一体、何?

戸惑う私は亜門の瞳から目をそらすことが出来ずに、大きく目を開いたまま見つめるだけ。

「つくし、許せ・・・。」

そう言ったかと思うと、亜門はそのまま唇を落としてきた。

口を大きく開け上下の唇ごと強く吸い、両頬を挟んだ指の力が強まったかと思うと、
唇を割り舌を入れて、口内を犯し始めた。

キスというより、お腹をすかせた猛獣が、とらえた獲物を遠慮無く味わうような野生的で濃厚で激しく、周囲を容赦なく黙らせる効果があった。
私は、身じろぎもできない。

「ヒュー!!」 ハルが叫ぶ。
修がスティックで小刻みな音をたて煽っている

その時、空を冷たく切るように、

「何やってるの?」

それは、花沢類の声だった。

呆然と振り返ると、睨んでいる花沢類と苦虫を踏み潰したように顔をしかめている西門さん。
そして、驚きのあまり息を止めている滋さんと桜子。
泣きそうな顔の優紀が立っていた。

つづく

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