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61.
日本からイタリア支社に戻り、真っ先に手をつけたのがエミロン社との業務提携に関する仕事だった。
「ふぅ~、結局、はめられたってことか・・・。
本当にお前は策士だよな、類。 感心するぜ・・・。」
「気に入らないのならいいよ、別に・・・。なんなら、牧野と交換する?」
「するわけ無いだろ! 分かったから、とっとと持って行け!50・50だからな!
それだけは譲れない。俺がイタリアに留まり頑張った報奨なんだからな。」
ニコリと牧野が名付けた天使の微笑みを浮かべる類。
亜門の行動の意味を類が本当に知っていたのか尋ねた俺に返ってきた答えは、びっくりするような話だった。
言葉にするだけで胸糞悪くなるが、スタジオで亜門と牧野がラブシーンを繰り広げた時のこと、
まさにその直前、類達の姿を亜門がちらりと捉えていたのを類は、見逃さなかった。
後日、亜門を呼び出し、真意を理解した類が引き継ぐ気になったのに、時間はかからず、そんな類に亜門は懐から取り出した例の写真を差し出したらしい。
一言「これを使え。」と・・・。
そして、類が計った通りに動いてくれた司。
NYの司に堂々と誓った手前、司からの叱咤が一番効果的に俺から冷静さを奪うことを計算に入れていた類は、俺の性格を知って筋書きを描いたわけだ。
もちろん、牧野のこと一番理解していると公言するほどの奴だから、
目的は太陽のような笑顔を守りたかったのだろう。
けれども、ちゃっかりエミロン社の業務提携に乗っかるつもりでいたなんて、なんて奴だ。
「あのさ、国沢はあの写真をずっと持ち歩いていたみたいだったけど、返してあげる?」
そうなのだ。国沢亜門という男は、好きな女のために汚れ役を引き受けた。
類にしても亜門にしてもこいつらなら、遠距離恋愛でできた小さなクレバスを前に竦んでいた牧野を強引に奪うこともできただろう。
けれど、俺たちを結びつけた。
全て牧野の幸せのためと。
こいつらの思いを裏切らないためにも、俺が牧野を幸せにする。
「返すわけがないだろ!」
「うん、そうだよね・・・。」
俺は、青池和也 現青池コーポレーション本社不動産部門総括マネージャー 兼 名古屋副支社長。
英徳を卒業後、親の会社に入社し、悪戦苦闘しながらも周囲にかわいがられ助けられて、ようやく認められ始めた今日この頃だ。
恋人の由貴子ちゃんとは順調に交際が続いている。
が、今日は由貴子ちゃんを日本に残して、はるばるフランスのパリに来ているというのに、なんだか泣きそうな気分だ。
「いつの間にこんなことになっていたんだよ~?俺は、全然知らなかったぞ~。」
「和也、そう落ちんなって・・・。類、何とか言ってやれよ。」
式服に身を包んだ西門が、花沢の方をちらりと見やる。
「 ・・・。 」
「なんだよ、何も教えない気? プロムのパートナーはお前だったのに、美作にとられちゃったから拗ねてるんでしょう? 」
「・・・ ぅるさい。」
トントン とノックの音とともに、道明寺と今日の主役美作が入ってきた。
道明寺は、黒のディレクタースーツで一段と貫禄が付いて見える。
新郎の美作は、白の長身に映えるフロックコート。
立襟にシルクの蝶ネクタイ、胸元に光るポケットチーフが勲章のようで、目がチカチカする。
「おい、美作、つくしちゃんといつから付き合ってたんだよ?!
なんで、一言も言ってくれなかったの?」
つくしちゃんは、まだ小学生だった頃からの大事な友達で、僕にとっては初恋の彼女だし、好きな人と幸せになってくれることは本当に嬉しい。
けど、仲間だと思っていた美作と結婚するという話は、招待状を受け取るまで知らなくて、蚊帳の外だったのは納得できない。
「おう、和也、牧野から何も聞いてなかった?」
シラ~と機嫌良さそうに言う美作のやつ、頭来る。
「何も聞いてないよ、ふん。」
「久しぶりじゃねえか、和也・・・。
そんなに熱くなるな、相手が牧野なんだから予測不能だし、あいつスゲぇ幸せそうに話してたぞ。何よりじゃねえか・・・。なあ?」
道明寺は、そう言って僕の背中を大きな手でバンとたたいた。
「司、牧野と話したの?」
「おう、電話でな。類、お前にはまんまと騙されたけど、結果all rightだからよ、いいんじゃね?
あいつ、“絶対、幸せになる!”ってきれいな声で言ってくれて、まるで見えるようだったぜ・・・ふっ。」
「よかったね、司も踏ん切りついたでしょ?」
「まあな・・・。」
道明寺は、つくしちゃんのことが好きでたまらなかったくせに、なんだか晴れ晴れした顔していて、F3に拳タッチして笑っている。
英徳の時みたいに、こうしてF4がスーッと集まって輪になっていると、やっぱり華があって、男の俺から見ても目が釘付けになる。
おっと、そう言えば、僕もF4の一員(?)だよね。
「ちょっと~、僕も輪に入れてよね!」
あわててかけ寄った。
「じゃ、そろそろ、花嫁を見に行きますか?」
西門が言うと、みんないっせいに微笑んでいた。
つづく
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