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7.
私の初舞台の日が来た。
どうしよう、緊張する。
あれだけ練習したし、曲もいい。大丈夫だよね。
朝から落ち着かない私は、本番で着る衣装の確認を名目に亜門に電話した。
「はい。」寝起きの亜門の声。
「ごめん、もしかして寝てた?でも、もう10時過ぎてるよ。」
「おぅ、10時かー。ねみ~。」
「あのさ、今日の衣装なんだけどさ、・・・」といったところで、「だ~れ~?こんな朝っぱらから」と横から絡みつくような女の声が聞こえた。
ぎょっ!ぎょ!
それから、手短に衣装のことを一方的に話しあわてて電話をきった。
あーびっくりした~。
亜門はあんな容姿で、モテないはずないし、そりゃ女が放って置くはずないか。
もしかして、他のメンバーもこんな感じなのぉ?
乱れた風紀は困るけど、モテるのは仕事柄喜ばしいことで、いちいち驚いていてはいけないよね!と自分に言い聞かせた。
なにはともあれ、無事、初めてのコンサートが終了。
会場は大盛り上がりだった。音楽が空気に溶けてく感じがした。
見に来てくれてる人達と一体となった感覚。この陶酔感は病み付きになりそうだ。
アンコールに二度ほど応えて、控え室にもどるとそこへ、西門さん・花沢類・滋さん・桜子・優紀が労いに来てくれた。
「まーきの。やっぱ、あいかわらず大きな声だね。」と飄々とした口調の花沢類。
「花沢類、来てくれたんだ。ね、どうだった?」
そこへ、大きな黄色い花束を差し出しながら、桜子が入ってくる。
「ギタリストの人、すごいタイプなんですけど、紹介してくださいよ。」
「滋ちゃんも、つくしに惚れちゃいました!」と、むぎゅ~のハグ。
「つくし、よかったよ。私の知ってる人じゃないみたいで、まぶしかったよ!すごいよ!」と優紀が言ってくれた。
「まっ、あれだ。案ずるより生むが易しという感じだな。よかったぜ。」と西門さん。
口々に嬉しいことを言ってくれる。
こうして駆けつけてくれる仲間がいて、私は本当に幸せだと思った。
「そういえば、美作さんは?」
「あー、あきらなら、仕事でどうしても抜けれないって。」
「じゃ、仕方ないよね。美作さんも、忙しい身だから。」
「・・・美作さん、今頃、会社かな?」
ポツリとつぶやくつくしを、類は見逃さない。
そのころ、あきらは、美作商事横浜支店の大会議室にいた。
「これまでの路線をそのままに考えている。今回のみなとみらい大型ファションモールが成功すれば、服飾事業だけでなく港湾事業にも今後利益を生むことになるはずだ。 みんな、抜かりなく、引き続き取り組んでいって欲しい。では、今日はお疲れさま。」
若手が雑談を交わし始める。
「美作支社長、ジュニアなのに、仕事真面目だよな。」
「あの若さで、こんな大きなプロジェクトを率いてるなんて、かなりやり手なんだろ。」
このプロジェクトの成功をかけて、気も抜けない緊張が続いている。
スタッフもいいメンバーをそろえた。
入社してまだわずかだが、ようやく骨組みが見え、プロジェクトの指揮をまかされた。
必ず成功させ、目に見える成果を上げることで、俺自身も大事な第一歩を踏み出すことになる。
将来の立場を思うと、こんなストレスは序の口だろう。
俺の前に敷かれたレールの上を上手く歩いて当然で、そのイメージと社員の期待を裏切るわけにはいかない。
「美作支社長、お紅茶をお持ちしました。お疲れでしょうから、シュガーを一杯加えたのですが、よろしかったですか?」
「あー、気が利くね。里美くん、ありがとう。」
「美作支社長が仕事をしている時の颯爽とした姿、素敵ですよ。お手伝いできることがありましたら、何なりとお申し付けください。」
つづく
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